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糖尿病・メタボリック・シンドロームと認知症予防

公開日:2016年7月25日 21時00分
更新日:2019年11月 8日 16時22分

メタボリック・シンドロームとは?

 メタボリック・シンドロームは別名「内臓脂肪症候群」といいます。内臓脂肪が蓄積された状態に加えて、高血圧・糖尿病・脂質異常症(高脂血症)のうち二つ以上を合併した状態です。内臓脂肪の蓄積はお腹のCTを撮影すれば詳細な量が測定できますが、健康診断などでは簡易な方法としておへその高さで腹囲をはかり、男性で85cm以上、女性で90cm以上だった時に内臓脂肪型肥満と判定します。さらに下の項目のうち2項目以上が当てはまればメタボリック・シンドロームです。

  • 高血圧:上の血圧(収縮期血圧)が130mmHg以上、もしくは下の血圧(拡張期血圧)が85mmHg以上のどちらかを満たす。もしくは高血圧の治療中。
  • 糖尿病:空腹時の血糖が110mg/dl以上。もしくは糖尿病の治療中。
  • 脂質異常症:中性脂肪が150mg/dl以上、もしくはHDLコレステロールが40mg/dl未満。もしくは脂質異常症の治療中。

メタボリック・シンドロームにより認知症を発症しやすくなる

内臓脂肪蓄積と認知症

 アメリカでは中年の肥満者はアルツハイマー型認知症に3倍なりやすく、脳血管型認知症は5倍になったと報告されています。スウェーデンでは肥満の人は2倍認知症になりやすいと報告されました。動物実験では蓄積した内臓脂肪から、脳の神経細胞を破壊する生理活性物質が分泌されていると報告されています。

高血圧と認知症

 「高血圧管理と認知症予防」のページをご覧ください。

リンク 「高血圧管理と認知症予防」

糖尿病と認知症

 糖尿病の人がのちにアルツハイマー型認知症になる危険性は2倍となり、さらに糖尿病になってから5年以上たつと危険性はあがるとされています。糖尿病に対し内服薬で治療している人は認知症になりやすく、インスリン治療をしている人は内服薬の人に比べてさらに認知症のリスクが高くなります。これは血糖コントロールが悪いと認知症の危険性が高くなることを示唆していると考えられます。

 同様に糖尿病があると脳血管性認知症の発症率も2倍になるといわれています。

 血糖を下げるインスリンには神経を保護する作用がありますが、メタボリック・シンドロームになるとその保護機能が低下し脳神経の変化が進むと考えられています。また高血糖の状態は記憶を担う海馬の萎縮を促し、記憶力が減退すると考えられます。

脂質異常症と認知症

 スウェーデンの研究では脂質異常症のある人が認知症になる可能性は脂質異常症がない人に比べて1.9倍でした。

 動物実験ではコレステロールの多い食事をすると脳の中に異常なアミロイド蛋白が増加することがわかっています。そして脂質異常症の治療薬であるスタチンを服用すると脳内アミロイド蛋白が減少します。実際にスタチンを服用している人はアルツハイマー型認知症になりにくいという報告もあります。

メタボリック・シンドロームと認知症

 肥満・高血圧・糖尿病・脂質異常症単独でも認知症の危険性は上がりますが、それぞれの因子が重なればさらに認知症の危険性は上がります。

 肥満・高血圧・脂質異常症の3つがある人の認知症の発生率は6.2倍でした。

 メタボリック・シンドロームは動脈硬化の原因であり、動脈硬化は脳血管疾患の原因です。脳梗塞や脳出血を発症すれば脳血管性認知症になる可能性があがります。

アルツハイマー病とメタボリック・シンドローム

 最も多い認知症であるアルツハイマー型認知症はメタボリック・シンドロームがあることで発症しやすいと考えられています。メタボリック・シンドロームになると神経の保護作用が弱まったり、動脈硬化による血圧上昇で脳細胞を認知症になりやすい状態にしていると考えられています。実際にアルツハイマー型認知症の患者の約60%は内臓脂肪が増えていたと報告されます。さらに、アルツハイマー型認知症になった患者の経過をみたところ、メタボリック・シンドロームの患者は認知機能低下の進行が早いこともわかっています。つまり、メタボリックシンドロームを改善することはアルツハイマー病になりにくくなり、さらにアルツハイマー型認知症になったとしても進行が緩やかになると考えられます。

関連書籍

 公益財団法人長寿科学振興財団は超高齢社会における喫緊の課題として認知症の実態、診断・予防・ケアについて学術的研究成果を「認知症の予防とケア」と題して研究業績集にまとめました。研究業績集の内容を財団ホームページにて公開しております。是非ご覧ください。

公益財団法人長寿科学振興財団 「認知症の予防とケア」平成30年度 業績集

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