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認知症とうつ

認知症とうつ病は合併することが珍しくありません。

認知症とは?

 人間は誰でも、もの忘れをします。ですので、"もの忘れイコール認知症"としたなら、世界中の人がみな認知症ということになってしまいます。認知症とは、「認知機能障害のため、それまで出来ていたことが出来なくなり、日常生活に支障が出ること」を言います(認知機能障害の定義は難しいので、ここでは"もの忘れ"と考えましょう)。もの忘れの程度がひどくなり、一人では仕事や家事を普段通りに出来なくなり、何らかの介助が必要になる状態を認知症と言います。

うつ病とは?

 人間は誰でも気持ちが落ち込むこともあれば、やる気が出なくなることもあります。ですので、"気分が落ち込んだらうつ病"、としたなら世界中の人がうつ病ということになってしまいます。うつ病を簡単に定義すると、「うつ症状のため、それまで出来ていたことが出来なくなり、日常生活に支障が出ること」となります(うつ症状は多彩であるため、ここでは"気分が落ち込み、やる気が無くなってしまうこと"と考えましょう)。うつ病とは、うつの程度がひどくなり、それまで出来ていた仕事や家事を普段通りに出来なくなる状態をいいます。

認知症とうつ病の関係は?

 ここまで読んでいただくと、認知症とうつ病には共通点があることに気付くでしょう。どちらも日常生活に支障が出てくることです。認知症とうつ病の間には、日常生活の支障の生じる主な原因が、認知機能障害なのか抑うつ症状なのかの違いしかありません。そして"認知機能障害"も"うつ症状"も、ちょっと難しく分かりにくい言葉です。これは、"もの忘れ"や"気分の落ち込み"が誰にでもあることから、医学的に"病気"と診断するためには厳密な定義を必要とするからです。

 さて、人は誰でも年を重ねるうちに認知症を発症する可能性があります。ですから、うつ病の人も高齢化すれば認知症になることがあります。更には認知症の方がうつ病にかかることもあります。要するに認知症とうつ病は合併することが珍しくないのです 1)

 このように、認知症とうつ病はそもそも区別しにくい上、密接な関係があることから、高齢者のうつ病と認知症を厳密に区別するのは、実は専門家でも簡単ではありません。両者を区別するのは専門家に任せた方が得策です。

認知症やうつ病になったら?

 さて上記を踏まえますと、

  • (1)うつ病でも認知症でもない
  • (2)うつ病であって認知症ではない
  • (3)認知症であってうつ病ではない
  • (4)うつ病と認知症が合併している

の4通りの診断が考えられます。

 (1)の場合は通常、治療する必要はありません。しかしながら、もしかすると、うつ病でも認知症でもないけれども、他の病気で似たような症状が出ているのかもしれません。その場合、認知症やうつ病とは違った検査や治療が必要になります。

 (2)の場合はうつ病の治療を、(3)の場合は認知症の治療を進めることになります。専門家による正確な診断が必要な理由は、うつ病と認知症ではそれぞれ治療法が異なるからです。診断が違っていると、治療法まで違った方向に進んでしまいます。

 (4)の場合は複雑です。両方の病気を同時に診ていかなければなりません。では、認知症にもうつ病にも効く、良い治療法はないでしょうか?この答えはなかなか難しいのですが、規則正しい生活リズムを保つこと、身体の健康状態を保つこと、それから軽い運動をすることがお奨めです 2,3)。お奨めできないのは、安易にお薬に頼ることです4)。お薬を使うのであれば、必ず専門家の判断を仰ぎましょう。

まとめ

 認知症とうつ病は区別が難しいことがあるので、迷ったら認知症を専門とする医療機関を受診しましょう。治療方法はそれぞれに違ってきます。そして安易にお薬に頼るのでは無く、先ずは身体の健康状態や生活習慣のうち改善できそうな点から直していきましょう。

参考文献

  1. Richard E, Reitz C, Honig LH, et al. Late-life depression, mild cognitive impairment, and dementia. JAMA Neurol 2013;70:374-82.
  2. Herring MP, Puetz TW, O'Connor PJ, Dishman RK. Effect of exercise training on depressive symptoms among patients with a chronic illness: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Arch Intern Med 2012;172:101-11.
  3. Lautenschlager NT, Cox KL, Flicker L, et al. Effect of physical activity on cognitive function in older adults at risk for Alzheimer disease: a randomized trial. JAMA 2008;300:1027-37.
  4. Banerjee S, Hellier J, Dewey M, et al. Sertraline or mirtazapine for depression in dementia (HTA-SADD): a randomised, multicentre, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet 2011;378:403-11.

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