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音楽療法

公開日:2016年7月26日 06時00分
更新日:2019年11月 8日 16時18分

音楽療法とは

 音楽療法とは、音楽の持つ特性を活用するプログラムを通してリハビリテーションを行うことです。健康の維持、心身の障害の機能回復、生活の質の向上、問題行動の改善などを目的に行われます。対象者のニーズを叶えるために音楽療法は行われるので、障害の有無は問わず、子供から高齢者まで全ての年齢・性別の方が対象となります。

 音楽療法の実施には、音楽の持つ特性を理解し、音楽をリハビリテーションとして用いるための技術を有していること。対象者の状態、ニーズを的確に捉えて、目的を達成するために必要な働きかけが行えることが必要です。日本では、日本音楽療法学会や県主催の音楽療法士の認定制度があります。

音楽療法の効果

 音楽療法には不安や痛みの軽減、精神的な安定、自発性・活動性の促進、身体の運動性の向上、表情や感情の表出、コミュニケーションの支援、脳の活性化、リラクゼーションなどの効果があげられます。

 心身の障害があって発語や意思疎通が難しい方でも、音楽を介するとコミュニケーションがとりやすくなります。高齢者の方は、昔の歌を思い出す、音楽を聴く、歌う、楽器を鳴らすことで、脳の働きや身体の動き、発声が促され、感情の乏しい方や自発性の低い方でも自然に笑顔が表れたり、リズムに合わせて身体を揺らしたりすることがみられます。認知症の進行の予防としては、歌いながら楽器を鳴らすなど、2つの動作を同時に行うことが有効とされています。子供では、音楽を介しての自己表現や成功体験を通して心身の発達を支援します。音を使ってコミュニケーションをとることや、集中力を養うこと、親への精神的なサポートにもなります。

 音楽療法の効果を科学的に証明するために、身体の免疫グロブリンの濃度や自律神経の状態、ストレスホルモンの変化などの検証が進められています。本来は重度の負荷が必要な免疫機能に関与するNK(ナチュラルキラー)細胞の活性及び量の増加が、音楽療法によって認められたという研究報告もあります1)。

音楽療法の実践方法

 対象者の希望や趣味・嗜好、身体・認知・ADLのレベルに合わせてプログラムを構築します。音楽を聴く、歌う、歌の歌詞や歌の情景に合った写真から想起する・話す、楽器を鳴らす・奏でる、音楽に合わせて身体を動かす、ストレッチをするなどを行い、音楽を聴くような受け身的なものを受動的音楽療法、対象者が歌う、楽器を鳴らすなど参加するものを能動的音楽療法と言います。

 歌の伴奏にはピアノやギター、対象者が使用する楽器には、ハンドベルやタンバリン、鳴子、鈴など様々な楽器が使われます。

 グループの場合は、一人一人が歌う・演奏することに加えて、他の方と音を合わせたり、順番に楽器を鳴らしたりなど、グループならではの相互の関係も促されます。個人の場合は、対象者の方の趣味や嗜好、希望により合わせたプログラムを構築でき、寝たきりの方や集団の適応が難しい方でも自宅訪問やベッドサイド、個室などで音楽療法を受けることができます。

高齢者に対するプログラムの例

  1. 挨拶や季節の話題など、導入を行います。
  2. 誰もが知っている定番の曲や季節の曲をピアノの伴奏に合わせて歌います
  3. 音楽に合わせて手拍子をうったり、体操をしたり、楽器を鳴らしたり、身体を動かします。
  4. ゆったりとした曲を鑑賞してクールダウンします。

音楽療法が受けられる施設

 全国の音楽療法センター・スタジオなどで受けられるほか、施設、病院、在宅では、音楽療法士事務所から音楽療法士が訪問という形で実施されます。音楽之友社のHPでは、音楽療法を実施している病院・施設が紹介されています。

音楽之友社,音楽療法を実施している病院(PDF:405KB)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

音楽之友社,音楽療法を実施している施設(PDF:328KB)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

関連書籍

 公益財団法人長寿科学振興財団は超高齢社会における喫緊の課題として認知症の実態、診断・予防・ケアについて学術的研究成果を「認知症の予防とケア」と題して研究業績集にまとめました。研究業績集の内容を財団ホームページにて公開しております。是非ご覧ください。

公益財団法人長寿科学振興財団 「認知症の予防とケア」平成30年度 業績集

参考文献

  1. 長谷川嘉哉,久保田進子,稲垣俊明,品川長夫:音楽療法によるナチュラルキラー細胞活性及び細胞数の変化.日本老年医学会雑誌2001.3;38巻2号:201-204

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