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脳血管性認知症

公開日:2016年7月26日 20時00分
更新日:2019年11月 8日 16時22分

脳血管性認知症とは

 脳血管性認知症とは、脳の血管障害でおきる脳梗塞や脳出血によって起こる認知症です。脳梗塞とは脳の血管が詰まって、脳の一部に血が流れなくなってその部分の脳の働きが消えてしまう病気です。脳出血は脳の血管が破れて出血し、その部分の脳細胞が溜まった血液によって押されて様々な症状が現れます。

 脳血管性認知症は認知症全体の約20%を占め、男性の方が多く発症しています。

脳血管性認知症の症状

 脳血管性認知症の主な症状は、日常生活に支障を来たすような記憶障害とその他の認知機能障害(言葉、動作、認知、ものごとを計画立てて行う能力などの障害)で他の認知症を来たす疾患と大きな違いはありません。

 しかし、症状の現れ方は特徴的で、突然症状が出現したり、落ち着いていると思うと急に悪化することを繰り返したり、変動したりすることがしばしばみられることです。また、ある分野のことはしっかりできるのに、他のことでは何もできないなど、まだら認知と呼ばれる特徴があります。

 更に、歩行障害、手足の麻痺、呂律が回りにくい、パーキンソン症状、転びやすい、排尿障害(頻尿、尿失禁など)、抑うつ、感情失禁(感情をコントロールできず、ちょっとしたことで泣いたり、怒ったりする)、夜間せん妄(夜になると意識レベルが低下して別人のような言動をする)などの症状が早期からみられることもしばしばあります。

脳血管性認知症の原因

 脳血管性認知症の人は脳血管障害に罹ったことがあり、さらに高血圧、糖尿病、心疾患など脳血管障害の危険因子を持っていることが多いことも特徴です。

 大きな脳梗塞や脳出血を起こした時には急激に認知症が発症しますが、小さな脳血管障害を頻回に繰り返して徐々に認知症が進む人もいます。

脳血管性認知症の診断

 頭部CTやMRIを行うと、大きな梗塞が見られたり、小さな脳梗塞がたくさん見られることもあります。特に認知機能に重要な役割を持つ部分(前頭葉、側頭葉、後頭葉、視床、海馬など)に梗塞があることが多いです。

 また、脳梗塞にはなっていなくても脳血管が狭くなっていることで脳への血流が低下し、そのために認知症を起こしている場合もあります。その場合は、脳の血管を調べるMR angiographyや脳血管造影、脳の血流を調べる脳血流シンチグラフィーで診断する場合もあります。

脳血管性認知症の治療

 脳の細胞は一度死んでしまうと戻ることはありません。脳血管性認知症の記憶障害やその他の認知機能障害を改善させる確実な方法は現在ないため、脳血管障害の再発予防と認知症の症状への対症療法が治療の中心となります。脳血管性認知症は脳血管障害を再発することで悪化していくことが多いため、再発予防が特に重要です。

 脳血管障害の危険因子である高血圧、糖尿病、心疾患などを適切にコントロールするとともに、脳梗塞の再発予防のために血液をサラサラにするといった薬剤が使われることもあります。

 また、意欲・自発性の低下、興奮といった症状に対しては脳循環代謝改善剤が有効な場合もあります。脳血管性認知症に多い抑うつに対して抗うつ剤が使用されることもあります。

脳血管性認知症のケア

 脳血管性認知症の場合、初期には自分が認知症だと認識しています。ですから、「こんなこともできないの?」といった言葉は患者を傷つけるため気をつけましょう。そういわれても患者はできないのです。そして、ある時はできたことが、別の時ではできなくなることもよくあります。怠けているだけ、と誤解してはいけません。できないときは手助けが必要です。

 介護者も負担が大きいので、介護保険などを利用しましょう。リハビリテーションも有用です。

 脳血管疾患になったことがある人は再発しやすいため、必ず定期通院しましょう。

関連書籍

 公益財団法人長寿科学振興財団は超高齢社会における喫緊の課題として認知症の実態、診断・予防・ケアについて学術的研究成果を「認知症の予防とケア」と題して研究業績集にまとめました。研究業績集の内容を財団ホームページにて公開しております。是非ご覧ください。

公益財団法人長寿科学振興財団 「認知症の予防とケア」平成30年度 業績集

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