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認知症の周辺症状

公開日:2016年7月26日 10時00分
更新日:2019年8月15日 10時34分

認知症の周辺症状(BPSD)とは

 認知症はいくつかの症状がセットになって出現してくる状態(これを症候群といいます)のひとつです。

 原因疾患はひとつではなく多岐にわたります。記憶障害、失見当識などの基本的な症状は中核症状と呼ばれ、脳機能低下を直接反映しており、認知症ではほぼ常に出現する症状群であるといえます。

 これに対して、すべての症例に出現するわけではありませんが残存する神経機能が外界への反応として示すと考えられるのが周辺症状です(図1)。

図1:認知症の中核症状と周辺症状

図1:認知症の中核症状と周辺症状

 周辺症状には幻覚、妄想(物取られ妄想が典型的)、抑うつ、意欲低下などの精神症状と徘徊、興奮などの行動異常があり、最近ではBPSD(Behavior and Psychological Symptoms of Dementia)と呼ばれるようになっています。

認知症の周辺症状(BPSD)の出現時期

 認知症の時間的経過の中で特定の周辺症状が出現しやすい時期があります(グラフ)。

 抑うつや不安感は比較的早期に出現しやすく、幻覚妄想や徘徊は中期に多く見られる傾向があります。ただし物取られ妄想は初期から認められることが多いようです。

 異食(食物以外のものを食べてしまう状態)、うなり声などは認知機能が著しく低下した末期に見られるようになります。

グラフ:アルツハイマー型認知症の症状と経過を示す曲線グラフ。認知症の時間的経過の中で特定の周辺症状が出現しやすい時期を示している。

グラフ:アルツハイマー型認知症の症状と経過

 アルツハイマー型認知症の時間的経過を第1期(初期)、第2期(中期)、第3期(末期)に分類。
初期には記憶障害、記銘力障害、失見当識(時間)が出現。徐々に知的機能障害が進行し、中期には中等度に知能低下し精神症状及び問題行動が顕在化、妄想、幻覚、徘徊、失行、失認が出現する。 また末期には人格変化、無言、無動、失外套症候群が出現する。

認知症の周辺症状(BPSD)の治療

 認知症の中核症状は診断上大変重要ですが、認知症の看護・介護していく上で大きな問題になるのは周辺症状です。

 表1には国際老年精神医学会が対処の困難さの観点から分類した周辺症状を挙げました1)

表1:周辺症状の分類
心理症状行動症状
グリープ1
(厄介で対処が難しい症状)
妄想、不眠、幻覚、不安、抑うつ 身体的攻撃性、徘徊、不穏
グループ2
(やや処置に悩まされる症状)
誤認 焦燥、社会通念上の不適当な行動と性的脱抑制、部屋の中を行ったり来たりする、わめき声
グループ3
(比較的対処しやすい症状)
- 泣き叫ぶ、ののしる、無気力、繰り返し尋ねる、シャドーイング(人につきまとう)

 治療法は薬物療法(リンク1)、非薬物療法があります。薬物治療には過活動症状と低活動症状の2つに対する治療法があります。

 興奮などの過活動症状では定型、非定型の抗精神病薬および気分安定化作用を期待しての抗てんかん薬を処方します。

 抑うつ、意欲低下などの低活動症状では抑うつに対しては選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬が有効です。

 アルツハイマー病(リンク2)の場合アリセプト投与が効果があります。

 最近、漢方薬の効果が注目され、中でも抑肝散(よくかんさん)は認知症の幻覚、興奮・攻撃性、焦燥感・易刺激性、異常行動において効果が期待できます。

 薬物療法は精神症状に対しては比較的効果がありますが、徘徊、性的脱抑制などの行動異常には効果が乏しく、対応に苦慮させられることが多いものです。

 非薬物的対応は環境への介入、心理的介入を個々の症例に応じて選択します。

 環境への介入としては認知症患者にとってストレスの少ない物理的環境を作り、時間的環境として睡眠覚醒リズムの維持が大切です。

 心理療法的アプローチとしては音楽療法、絵画療法などがあり一定の効果が期待できます。いずれにしても症状が激しい場合は専門病院への入院が必要となります。

リンク1 「認知症の薬物療法」

リンク2 「アルツハイマー病」

関連リンク 「認知症に対する非薬物的療法」

関連リンク 「徘徊の対応」

参考文献

  1. 国際老年精神医学会:モジュール2 臨床的な問題 In 痴呆の行動と心理症状 日本老年精神医学会監訳 東京、アルタ出版、2005、p27-49

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