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認知症の種類

公開日:2016年7月26日 22時00分
更新日:2019年11月 8日 16時00分

 日本神経学会の「認知症疾患治療ガイドライン」によると、認知症は一度正常に達した認知機能が後天的な脳の障害によって持続性に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態のことを言います1)

 認知症はそれ自体がひとつの病気というわけではなく、いろいろな病気によって引き起こされた状態(病態)です。

 では、そのいろいろな病気にはどんなものがあるのでしょうか。ここでは病理学的に、すなわち脳の障害のされ方をもとに分類し、以下にまとめます。個々の病気に関してはその項目の説明をご参照ください。

1. 神経変性疾患

  • アルツハイマー型認知症
  • レビー小体型認知症
  • 前頭側頭型認知症
  • 大脳皮質基底変性症
  • 進行性核上性麻痺 など

2. 脳血管障害(血管性認知症)

  • 脳梗塞
  • 脳出血
  • くも膜下出血
  • ビンスヴァンガー病
  • 遺伝性脳小血管病(CADASIL,CARASIL) など

3. 炎症

  • 細菌性脳炎
  • ウィルス性脳炎(日本脳炎、単純ヘルペス脳炎、エイズ等)
  • クロイツフェルト ヤコブ病
  • その他の脳炎(結核、梅毒等) など

4. 脳腫瘍

5. 外傷その他の外科的疾患

  • 頭部外傷
  • 慢性硬膜下血腫
  • 正常圧水頭症 など

6. その他、認知症と類似の症状をきたす疾患

  • 甲状腺機能低下症
  • 肝性脳症(肝不全)
  • 腎不全
  • 呼吸不全
  • ビタミン(B1、B12、葉酸等)欠乏
  • 中毒(薬物、一酸化炭素、アルコール等) など

1.神経変性疾患

 脳の神経細胞が死滅することによって引き起こされる病気です。細胞が死滅する原因は不明のものが多いのですが、変性に陥った部位によって様々な症状が出現します。

 認知症の中で最も多いアルツハイマー型認知症が代表的なものですが、パーキンソン病の近縁疾患であるレビー小体型認知症、ピック病を含む前頭側頭型認知症、認知機能障害と手足、体の不随意運動を特徴とする大脳皮質基底核変性症等がこれに含まれます。

 パーキンソン病とよく似た運動障害を呈する進行性核上性麻痺でもしばしば認知機能障害をおこします。その場合、前頭葉が中心に障害されますので、認知機能障害だけをみれば前頭側頭型認知症と類似します。

2.脳血管障害(血管性認知症)

 脳出血、脳梗塞、くも膜下出血等によって脳の組織が破壊され、破壊された部位によっては認知症をきたします。それらを血管性認知症と呼びます。

 明らかな脳卒中の発作がなくても、小さな梗塞が何回かにわたっておこる多発脳梗塞でも認知症をきたすことがあります。 脳深部の白質と呼ばれる部分に広範囲に循環障害がおこると、その部位が虚血状態になり、認知症をおこします。それはビンスヴァンガー病と呼ばれ、血管性認知症の一型と言えます。

 小さな血管が障害される遺伝性脳小血管病(CADASIL,CARASIL)は稀な病気ですが、認知症の原因として重要です。比較的若い年代から脳血管障害が繰り返しおこり、結果として認知症になることがあります。

3.炎症

 細菌やウィルスによる脳炎の後遺症として認知機能障害が残ることがあります。その場合、認知症の症状は持続しますが、原則として進行することはありません。一方、慢性、進行性に炎症をおこす病気もあり、その場合は認知症の症状も進行性です。

 細菌性脳炎や日本脳炎、単純ヘルペス脳炎、エイズ等のウィルス性脳炎や「プリオン」と呼ばれる特殊な蛋白の感染によるクロイツフェルト・ヤコブ病などがこういった認知症の原因として重要です。

4.脳腫瘍

 文字通り脳にできる腫瘍で、腫瘍ができる部位によっては認知症をおこします。何もしなければ腫瘍の伸展に伴い認知機能も進行しますが、手術や放射線療法等が有効に働けば正常に戻る、あるいは進行が止まる可能性もあります。

5.外傷その他の外科的疾患

 ここに含まれる病気の中には手術等で治癒または改善するものがあり、医師が診断する上で見落としてはなりません。

 高齢者では頭部外傷の既往が明らかでなくても慢性硬膜下血腫をおこすことがあり、要注意です。正常圧水頭症は歩行障害や排尿障害を伴うことが多いのですが、認知症だけを呈する場合もあり、注意が必要です。

6.その他、認知症類似の症状をきたす疾患

 「治療可能な認知症」等と呼ばれることのある一般内科的疾患をここに入れました。脳の障害をきたすものではなかったり、意識レベルの低下に基づくものだったりすることがあるため、厳密には認知症の中に入れるべきではないのでしょうが、時として認知症と診断されるものです。

 これらの中には血液や尿、その他の一般内科的検査で診断がつくものも多く、早計に認知症と判断するのではなく、しっかりと医師の診察を受けることが望まれます。

関連書籍

 公益財団法人長寿科学振興財団は超高齢社会における喫緊の課題として認知症の実態、診断・予防・ケアについて学術的研究成果を「認知症の予防とケア」と題して研究業績集にまとめました。研究業績集の内容を財団ホームページにて公開しております。是非ご覧ください。

公益財団法人長寿科学振興財団 「認知症の予防とケア」平成30年度 業績集

参考文献

  1. 日本神経学会(2010)「認知症疾患治療ガイドライン」(PDF:1.12MB)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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