健康長寿ネット

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いつも元気、いまも現役(東京都江戸川区 和田 京子さん)

公開日:2020年3月27日 09時00分
更新日:2020年3月27日 09時00分

専業主婦から職業婦人へ華麗なる転身

 「79歳で宅地建物取引士(宅建)の資格を取得、80歳で不動産会社を起業」

 "長寿時代に人生二毛作"といわれるが、それを見事に実現している和田京子さん。御年87歳。80歳で起業する前は、教師だった夫を支え、一男一女を育て上げた専業主婦だった。

 京子さんが経営する「和田京子不動産」は、東京都江戸川区のJR小岩駅から少し歩いた場所の路地裏にある。自宅の和室を店舗として改装し、畳敷きのお茶の間のようなアットホームな空間でお客様の物件相談に乗っている。

 「今日はようこそおいでくださいました。まだお寒いですから、体が温まるまでコートはお脱ぎにならないで」と女性ならではの心遣いの京子さん。

 英国人デザイナーのヴィヴィアン・ウエストウッドの洋服を着こなす。モダンなボブヘアとつけまつ毛もトレードマークだ。「つけまつ毛は、最初は恥ずかしかったけれど、今は『目を盛っています』と堂々と言っています」と照れ笑い。

 「この年になって"京子さん"ってみなさんに名前で呼んでいただいてうれしいわ。私たちの若いころは、女性は奥に引っ込んで暮らすという時代でしたから。87歳になって、夜も寝ないで働く職業婦人になれたことに自分が驚いています」

 80歳で専業主婦から不動産会社経営者へ。京子さんの転身ストーリーをうかがってみる。

憧れの学生生活に心をときめかせ

 京子さんは77歳のとき、10年間の介護の末、夫を自宅で看取った。張り詰めていた糸が切れ、何をするにも気持ちが入らず、家で寝て過ごす毎日。そんな京子さんを孫の昌俊さんが見かねて「何か好きなことを勉強してみたら」と勧めたという。

 そこで思い付いたのは「宅建」の勉強だった。「もともと家に興味がありました。大工になりたいと思っていたくらい。本屋で宅建の本をみつけて開いてみたらおもしろくて一気読み。自分が家を買うときにこれを読んでいれば、もっと利口な買い方ができたのに...。宅建は国家資格ですし、働く、働かないは別として勉強するなら宅建に限ると思ったのです」

 娘さんの勧めもあり、宅建の資格を取るため、東京・水道橋にある専門学校の門を叩いた。「感動したのは、宅建の資格を取る条件は、日本国籍以外に何もないということ。年齢制限もないのです」。それから半年間、20歳代のクラスメイトと一緒に机を並べて猛勉強。

 「学生生活と勉強に強い憧れがありました。女学生のころは戦争で校舎も焼けてしまって、勤労奉仕で勉強もできなかった。学校に通って、先生がいて黒板があって、そういうムードがたまらなくうれしかったです。6か月の通学定期券を買ったの。週2回しか通わないから切符を買ったほうが安いのに。駅員さんに定期券を見せて改札を通る気分のよさといったらないですね」とたちまち女学生の笑顔になる。

写真1:女性最高齢宅建合格者として表彰された筆者和田京子氏の様子を表す写真。(写真提供:和田京子不動産)
女性最高齢宅建合格者として表彰された。短いホットパンツとロングブーツ姿で(写真提供:和田京子不動産)

80歳社会人一年生にして会社経営者に

 猛勉強の末、合格率16%ほどの宅建の資格試験に79歳で合格。女性最高齢宅建合格者として専門学校から表彰された。「毎年合格点は変わりますけど、私のときは50点中33点で、私は32点でした。なぜ合格できたかというと、あとになってそのうちの1点は"どちらを書いても正解"となったので、ぎりぎり合格できたのです」

 インターネットの合格者欄には「和田京子」と名前があるが、「落ちたかもしれない」という気持ちが消えなかったという。そこで昌俊さんが都庁へ合格発表の名前を確認しにいこうと京子さんを誘い出した。「都庁で自分の名前を直接見て、合格できたという実感がわいてきました」

 その帰り、都庁の最上階のレストランで、京子さんと昌俊さんは祝杯をあげた。「レストランから東京の街が一望できました。下に見える1軒1軒の売買に関わることができるとしみじみ思いました。そう思ったら、『ジャックと豆の木』みたいに、最初は地面にいたのがだんだんと豆の木をつたって空高く登っていける。そんなイメージを持ちましたね」。そのときの京子さんの高揚感が伝わってくる。

 その後、不動産会社で職を得ようと生まれて初めて履歴書を書いたが、生年月日を書いたところでふと気が付く。「どこの会社が80歳のおばあちゃんを雇ってくれる?職歴には"主婦55年"としか書けない。せっかく得た資格を活かすなら起業するしかない」

 2010年、80歳で「和田京子不動産株式会社」を設立。社会人1年生にして代表取締役社長となった。のちにIT会社に勤務していた昌俊さんも宅建資格を取得。昌俊さんという頼もしい共同経営者を得て、二人三脚で経営をスタートさせた。若いころに家を買うこと7回。そのたびに悪徳不動産にだまされ、欠陥住宅に悩まされた。自分の苦い経験をお客様の家探しに活かしたいと売買専門の不動産にすることを決めた。

 開業後2年間はなかなか契約にこぎつけなかったが、誠心誠意お客様の立場に立ったサービスを続け、5年目になると年商5億円を達成。次第に京子さんの生き方はテレビや雑誌で多く取り上げられるようになり、「京子さんに物件を探してもらいたい」とお客様が押し寄せるようになった。

24時間営業、仲介手数料無料のお客様第一主義の不動産

 和田京子不動産は、「年中無休24時間営業」「仲介手数料無料」の驚くべきサービスで不動産業界に新しい風を吹き込んでいる。

 「それを始めたのはまったくの主婦感覚からです(笑)。初めて家を買う人は物件の知識がない人がほとんどなので、不動産屋にじっくり相談して物件を決めたいと思うはず。ですが、仕事が終わる時間には不動産屋はもう閉まっている。仕事で忙しい若い世代も夜遅いサービス業の人も、心置きなく好きな時間に相談できるように年中無休24時間営業に決めました」

 「仲介手数料無料サービス」についてはどうか?一般的な仲介手数料は売主と買主からそれぞれ3%プラス6万円をいただく。その3%は上限であり、それ以内であれば、それぞれの不動産業者で調整していいのだという。そこで和田京子不動産では、物件購入者からいただく仲介手数料を無料にするというサービスを打ち出している。

 「江戸時代の思想家で石田梅岩の『実(まこと)の商人は、先も立(たち)、我も立つことを思うなり』という言葉があります。家を売る人は1,000万円で売りたい。でも買う人は980万円で買いたい。買う人は必ず値引きしてほしいとおっしゃる。売る人は少しでも早く売りたいから、本当は1,200万円で売りたいところを、ぎりぎりの1,000万円の値を付けている。でも買う人からすると売値で買うのは損だと。

 そこで私は言います。買う人には『売る人の気持ちを汲んであげてください』。売る人には『買う人は苦労して資金を出している。その気持ちを察してあげてください』と。お互いが相手のことを少し思って譲り合えば、気持ちよく売り買いが成立する。そして『私たちは仲介手数料は要りませんから、値下げしてもらわなくてもお買いなさいよ』と買う方に言います。その代わり私たちは3倍働く覚悟です」

 「でも正直言うと、このサービスを始めて3日で失敗したと思いました(笑)」と話すように、「仲介手数料無料」のサービスには同業者の風当たりが強い。「同業者からお叱りや嫌がらせを受けても、一度掲げた看板は下ろせません。粛々と手数料無料サービスを続けています」と京子さんはきっぱり言う

 「年中無休24時間営業」も京子さんと昌俊さんの2人経営の会社では体力的には厳しいだろう。

 「日中はお客様の対応がほとんど。夜は予約のお客様の対応と、問い合わせのお客様のメール対応が多いです。まるでメールが友達みたい。パソコンもスマホも仕事を始めてから覚えました。夜中にメールでお客様の対応をしていて、気が付いたら明るくなっていることが多いですね。夜はそうたくさん寝られません。どうせもう布団では寝ないと、布団は捨ててしまいました(笑)。そういう暮らしに切り替えると腹を決めました。返事を待ってくれているお客様に申し訳ないですから。宣伝もしないのによくお客様がいらしてくださる。それには本当に感謝しています」

 「年中無休24時間営業」や「仲介手数料無料サービス」をやめようと考えたこともあるが、お客様から「私が買うまで待ってほしい」と言われる。「だから私が元気なうちはやめるわけにはいきません」とお客様第一主義を貫く京子さんだ。

写真2:筆者和田京子氏と共同経営者である孫の昌俊氏の写真。
孫で共同経営者の昌俊さんと。「祖母はお客様の信頼を勝ち取るのがものすごくうまい。もしお客様を和田京子と取り合うとしたら、私は相当苦労すると思います。身内で本当によかった(笑)」

外見の若さと心の若さの深いつながり

 和田京子不動産の制服はヴィヴィアン・ウエストウッドの服。「この制服を着ていると気持ちがシャンとしますね」。デザイナーのヴィヴィアンさんが70歳半ばを過ぎても生き生きと活躍する姿に共感を覚えたのだという。仕事で行き詰まったときには、制服が初心を思い出させてくれる。京子さんにとって大切なアイテムだ。

 「お会いする方から『恰好が若い』と言われて少し恥ずかしいのですが、振り返ってみれば、髪型や服装を変えたころから、人生が再び動き出したような気がします」。外見の若さと心の若さには深いつながりがあるということを京子さんが教えてくれる。

 不動産業界は競争が激しい世界。同業者の嫌がらせにも静かにまっすぐ立ち向かう京子さん。その原動力はどこからわいてくるのだろう?

 「『社会に恩返ししたい』という気持ちがあります。今まで生きてきた中で、何度も人に助けられて、ようよう生きながらえてこられたと思っています。

 戦争中、兵隊さんが水筒の底に残っていた水を飲ませてくれて、そのお水の美味しかったこと。トイレの汲み取りができない家に住んでしまったときも、区役所の人が助けてくれた。結核で胸を悪くしたとき、担当医が新しい術式で手術をして命を救ってくれました。術後は、のちに夫となる主人がよく看病をしてくれました。いろんな人に助けられて、何らかの意味でここまで生かしてもらって、自分のできることで少しでも恩返ししたいというのが私の夢です」

(2017年4月発行エイジングアンドヘルスNo.81より転載)

プロフィール

写真:インタビュアー和田京子氏
和田 京子(わだきょうこ)(東京都江戸川区 不動産会社社長)
 1930年(昭和5年)愛知県岡崎市生まれ。77歳で夫と死別するまで専業主婦。79歳で宅地建物取引士の資格を取得。女性最高齢合格者として話題になる。80歳で「和田京子不動産株式会社」を設立。物件購入者からの仲介手数料を無料、24時間365日営業などの新しいサービスを掲げ、不動産業界に革命を起こす。「和田さんから物件を購入したい」というファンが多数。多くのメディアでその生き方が取り上げられている。
 著書に『85歳、おばあちゃんでも年商5億円』(WAVE出版)がある。

転載元

公益財団法人長寿科学振興財団発行 機関誌Aging&Health No.81

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