健康長寿ネット

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高齢者の家族関係

公開日:2016年7月25日 10時00分
更新日:2022年7月21日 10時35分

高齢者のいる世帯の割合

 平成29年(2017年)の国勢調査の結果によると、日本全国の総世帯数は5,333万世帯でした。そのうち65歳以上の高齢者がいる世帯は2,171万世帯で、一般世帯全体のうち40.7%を占めており、ここ数年増加傾向にあります1)

 また、三世代で生活する世帯数は302万世帯であり、一般世帯全体のうちわずか5.6%しかありません。その一方で、親と未婚の子のみの世帯、夫婦のみの世帯、単独世帯は増加傾向となっています。平成25年(2013年)までの推移 をみると、夫婦のみの世帯が一番多く約3割を占めており、単独世帯とあわせると半数を超える結果となっています(グラフ、表)。

グラフ1:65歳以上の高齢者の居る世帯の割合を示すグラフ。全世帯の4割が高齢者世帯であり、そのうち半数は単独か夫婦のみの世帯であることを示す
グラフ:65歳以上の者のいる世帯及び構成割合(世帯構造別)と全世帯に占める65歳以上の者がいる世帯の割合2)
表:65歳以上の者のいる世帯数及び構成割合(世帯構造別)と全世帯に占める65歳以上の者がいる世帯の割合(千世帯/%)
昭和55年(1980年) 平成2年(1990年) 平成12年(2000年) 平成18年(2006年) 平成22年(2011年) 平成23年(2012年) 平成24年(2012年) 平成25年(2013年) 平成26年(2014年)
単独世帯 910 1,613 3,079 4,102 5,018 4,697 4,868 5,730 5,959
夫婦のみの世帯 1,379 2,314 4,234 5,397 6,190 5,817 6,332 6,974 7,242
親と未婚の子のみの世帯 891 1,275 2,268 2,944 3,837 3,743 4,110 4,442 4,743
三世代世帯 4,254 4,270 4,141 3,751 3,348 2,998 3,199 2,953 3,117
その他の世帯 1,062 1,345 1,924 2,091 2,313 2,166 2,420 2,321 2,512
全世帯に占める65歳以上の者がいる世帯の割合 24 26.9 34.4 38.5 42.6 41.6 43.4 44.7 46.7

 高齢者のみの世帯が増加傾向にあることから、子どもや孫の世代をともに生活する高齢者は減少しています。子ども視点からみると、親である高齢者とは一定の距離を保ちながら生活している様子がうかがえます。

家族構成の健康への影響

高齢者と家族が団らんしているイラスト。一人暮らし世帯や夫婦のみ世帯で生活する高齢者よりも、二世代、三世代で生活する高齢者の方が、人生への生きがいを感じつつ、健康維持に向けた活動に積極的であることを示す。

 家族構成が高齢者に与える影響とは、どのようなものなのでしょうか。

 内閣府が行った「平成25年度 高齢者の地域社会への参加に関する意識調査結果」によると、生きがい(喜びや楽しみ)を「十分に感じている」「多少感じている」と答えた人は、一人暮らし世帯、夫婦のみ世帯、二世代世帯(子どもと同居、親と同居)よりも、三世代世帯の方が多いことがわかりました。男性では「三世代世帯(子ども・孫と同居)と答えた人がもっとも多く、全体の83.7%を占めていました。女性の場合は同じ三世代世帯でも、親・子どもと同居と答えた人がもっとも多く、91.7%を占めました。

 また、同じ調査結果の中で、「最も力を入れたい活動」として、「健康・スポーツ」と答えた人は、男性では「親と同居している二世代世帯」がもっとも多く47.1%を占め、女性も同様に「親と同居している二世代世帯」がもっとも多い(47.1%)という結果になりました。

 これらのことから、一人暮らし世帯や夫婦のみ世帯で生活する高齢者よりも、二世代、三世代で生活する高齢者の方が、人生への生きがいを感じつつ、健康維持に向けた活動に積極的であることが読み取れます。

高齢者の孤食が健康に及ぼす影響

 単独世帯の高齢者の増加傾向が続き、平成27年の国勢調査の結果によると、全世帯数のうち65歳以上の単独世帯が占める割合は、11%を超えています。そうなると、必然的に高齢者の孤食者の数も増加します。

 孤食とは一人で食事を摂るということを言います。20~60歳代と、70歳以上の年齢階級別に,昼食と夕食のとり方について行った調査結果をみてみましょう。家族の有無にかかわらず、一人で昼食をとる人は、20代から69歳は20%であるのに対し、70~79歳、85歳以上では27%、80~85歳以上は33%となりました。また、一人で夕食をとる人は、20~60歳では14%であるのに対して、70~84歳では20%を上回るという結果となり、高齢者の孤食割合は高いことが分かります3)

 特に高齢男性の場合、孤食は寿命へも影響を及ぼしています。東京医科歯科大学の谷友香子研究員らの調査によると介助を必要としていない65歳以上の高齢者で、家族と一緒に食事をしている男性が3年間に亡くなる割合は6%であるのに対し、何らかの理由で家族と同居はしていても孤食をしている男性は、3年間で9.5%が亡くなっています。この調査で高齢女性には大きな変化は見られませんでした4)

 しかし、女性であっても死亡にまで影響をしなくても孤食をすることで食べたいときに食べたいものを食べてしまうことから、栄養バランスが乱れ、栄養不足や栄養過多に陥りやすく、結果として、生活習慣病をはじめとする、さまざまな病気の原因にもなりかねません。

 これらのことを鑑みると、特に高齢者の単独世帯が多い地域や、単独世帯ではなくても孤食に陥りがちな状況にある高齢者が多い地域では、地域団体などが主体となり、定期的な会食を行うなどといった対策が、必要かもしれません。食事のスタイルが、健康長寿へ影響する可能性が考えられるためです。

参考文献

  1. 平成27年国勢調査結果 統計局(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. 平成27年版高齢社会白書(概要版) 内閣府(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. 高齢者の孤食状況とその要因 農林業問題研究(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  4. Tani Y, Kondo N, Noma H, Miyaguni Y, Saito M, Kondo K. Eating alone yet living with others is associated with mortality in older men: The JAGES cohort survey. J Gerontol B Psychol Sci Soc Sci (in press)

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