健康長寿ネット

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高齢者の日常生活活動

公開日:2016年7月25日 05時00分
更新日:2019年2月 1日 17時38分

日常生活動作能力(ADL)とは

 日常生活活動(日常生活動作能力)(Activities of daily living;ADL)とは、人が毎日の生活を送るために各人が共通に繰り返す、さまざまな基本的かつ具体的な活動のことです。もともとリハビリテーション分野における患者の機能障害や効果測定のために開発されたものですが、近年では高齢者の生活機能の尺度として用いられることが多くなっています。

 狭義のADLは、家庭における、歩行や移動、食事、更衣、入浴、排泄、整容などの身のまわりの基本的な身体動作を指し、基本的日常生活動作能力(Basic Activity of Daily Living;BADL)と呼ばれます。

高齢者夫婦が日常生活動作の一つである買い物をするイラスト。

 一方、ADLをより広い概念とする場合には、交通機関の利用や電話の応対、買物、食事の支度、家事、洗濯、服薬管理、金銭管理など、自立した生活を営むためのより複雑で多くの労作が求められる活動を含み、これらを手段的日常生活動作能力(Instrumental Activities of Daily Living;IADL)と呼びます(リンク1参照)。

高齢者男性が日常生活動作の一つである電話をするイラスト。高齢者の日常生活活動(ADL)の指標として様々な日常生活自立度判定基準が設けられ、評価される。

 リンク1 「高齢者の生活機能」

ADLの指標

 ADLは自立した生活の基本となるものであり、機能障害が改善したとしても、それが生活に結びつかなければ対象者にとってはあまり意味がありません。そこで実際にADLの評価、指導を行う上では、評価・訓練時に発揮されるADL能力である「できるADL」と、実生活の中で実際に発揮している「しているADL」、さらには、将来的に実生活の中で実行するようになる「するADL」のレベルにわけてとらえることが重要です。

できるADLの指標

 「できるADL」を評価する指標としては、LawtonによるADL評価様式(ベッド上動作、車椅子、身のまわり、手を使うこと、歩行、立ち上がり、昇降と外出、住居状況、用具のそれぞれを5段階評価)、Potvinの模擬的ADL検査(模擬的動作の遂行時間を測定する)などがあげられます。

しているADLの指標

 「しているADL」の指標としては、KatzのADL自立指標(入浴、更衣、トイレへの移動、移乗、排泄コントロール、食事について評価)と機能的自立度評価法(Functional independence measure; FIM)(セルフケア、排泄コントロール、移乗、移動、コミュニケーション、社会的認知について評価)があります。

総合指数

 また、ADLに必要な援助の量を考慮した総合指数としてBarthel Indexがよく知られています。わが国では、地域や施設等の現場で保健婦などが、何らかの障害を有する高齢者の日常生活自立度を客観的、かつ短時間に判定することを目的として作成された、障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準(表1)、認知症高齢者の日常生活自立度を客観的にかつ短期間に判定することを目的として作成された、認知症老人の日常生活自立度判定基準(表2)がよく用いられています。

 IADLの指標としては、Lawtonの尺度、Fillenbaumの尺度などがあります。

障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準
生活自立 ランクJ 何らかの障害等を有するが、日常生活はほぼ自立しており独力で外出する
  1. 交通機関等を利用して外出する
  2. 隣近所なら外出する
準寝たきり ランクA 屋内での生活はおおむね自立しているが、介助なしには外出しない
  1. 介助により外出し、日中はほとんどベッドから離れて生活する
  2. 外出の頻度が少なく、日中も寝たり起きたりの生活をしている
寝たきり ランクB 屋内での生活は何らかの介助を要し、日中もベッド上での生活が主体であるが、座位を保つ
  1. 車いすに移乗し、食事、排泄はベッドから離れて行う
  2. 介助により車いすに移乗する
ランクC 1日中ベッド上で過ごし、排泄、食事、着替において介助を要する
  1. 自力で寝返りをうつ
  2. 自力では寝返りもうたない

(平成3年11月18日 老健第102-2号 厚生省大臣官房老人保健福祉部長通知を改訂)

認知症高齢者の日常生活自立度判定基準
ランク 判断基準 見られる症状・行動の例 判断にあたっての留意事項
何らかの認知症を有するが、日常生活は家庭内及び社会的にほぼ自立している。   在宅生活が基本であり、一人暮らしも可能である。相談、指導等を実施することにより、症状の改善や進行の阻止を図る。
日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できる。   在宅生活が基本であるが、一人暮らしは困難な場合もあるので、日中の在宅サービスを利用することにより、在宅生活の支援と症状の改善及び進行の阻止を図る。
Ⅱ a 家庭外で上記 Ⅱ の状態がみられる。 たびたび道に迷うとか、買物や事務、金銭管理などそれまでできたことにミスが目立つ等
Ⅱ b 家庭内でも上記 Ⅱ の状態がみられる。 服薬管理ができない、電話の応対や訪問者との対応など一人で留守番ができない等
日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが見られ、介護を必要とする。   日常生活に支障を来たすような行動や意思疎通の困難さがランク Ⅱ より重度となり、介護が必要となる状態である。「ときどき」とはどのくらいの頻度を指すかについては、症状・行動の種類等により異なるので一概には決められないが、一時も目を離せない状態ではない。在宅生活が基本であるが、一人暮らしは困難であるので、夜間の利用も含めた居宅サービスを利用しこれらのサービスを組み合わせることによる在宅での対応を図る。
Ⅲ a 日中を中心として上記 Ⅲ の状態が見られる。 着替え、食事、排便、排尿が上手にできない、時間がかかる。
やたらに物を口に入れる、物を拾い集める、徘徊、失禁、大声、奇声をあげる、火の不始末、不潔行為、性的異常行為等
Ⅲ b 夜間を中心として上記 Ⅲ の状態が見られる。  ランク Ⅲ aに同じ
日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする。 ランク Ⅲ に同じ 常に目を離すことができない状態である。症状・行動はランク Ⅲ と同じであるが、頻度の違いにより区分される。
家族の介護力等の在宅基盤の強弱により在宅サービスを利用しながら在宅生活を続けるか、又は特別養護老人ホーム・老人保健施設等の施設サービスを利用するかを選択する。施設サービスを選択する場合には、施設の特徴を踏まえた選択を行う。
M 著しい精神症状や周辺症状あるいは重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする。 せん妄、妄想、興奮、自傷・他害等の精神症状や精神症状に起因する問題行動が継続する状態等 ランク Ⅰ ~ Ⅳ と判定されていた高齢者が、精神病院や認知症専門棟を有する老人保健施設等での治療が必要となったり、重篤な身体疾患が見られ老人病院等での治療が必要となった状態である。
専門医療機関を受診するよう勧める必要がある。

(平成18年4月3日 老発第 0403003号「「痴呆性老人の生活自立度判定基準」の活用について」の一部改正について)

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