健康長寿ネット

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高齢者の精神的自立の評価

自立の種類

 一般的に、人として自立しているかどうかは、生活的自立、経済的自立、精神的自立の、三つの視点から考えます。

生活的自立

 生活的自立は、人が生きていくための生活機能を基本的日常生活動作能力(Basic Activity of Daily Living;BADL)や、手段的日常生活動作能力(Instrumental Activity of Daily Living;IADL)によって評価されるものです。歩行、移動、食事、排泄などの日常生活動作だけではなく、より複雑な生活動作や、状況を判断して行動する能力などが含まれています。

経済的自立

 自らが必要とする生活費を、預貯金や年金、財産収入などの「自分の収入」で、賄うことができることを、「経済的に自立している」といいます。収入と支出とのバランスを把握し、活用していきます。

精神的自立

 精神的自立は、「自分の意思で物事を判断し、自分の責任で行動することができる能力」のことを指します。人は日常生活の中で「この場合はこちらを選ぶ」など、何かを「選択する」場面は非常に多いです。その時、自分の意思で「どちらか」を選択し、それに対して自分で責任をもって行動すること、これができることが「精神的に自立している」という判断につながります。

高齢者の健康の指標「生活機能の自立」とは

 生活機能とは人が生きていくための機能全体のことを指します。世界保健機関(WHO)は、1984年に「生活機能の自立を高齢期の健康の指標」とすることを提唱しており、高齢期における自立した生活を維持する能力は、この頃から必要とされていました。

 高齢者の生活機能としては、基本的日常生活動作能力(BADL)と呼ばれる、歩行や移動、食事、更衣、入浴、排泄、整容などの基本的な身体動作がよく知られています。

 しかし、生活機能にはこれだけでなく、手段的日常生活動作能力(IADL)と呼ばれるものがあります。これは、

  • 交通機関の利用や電話の応対をすること
  • 自分で買い物をすること
  • 食事の支度をすること
  • その他必要な家事をすること
  • 洗濯をすること
  • 自分で自分の薬を管理(服薬管理)すること
  • 自分で自分のお金を管理(金銭管理)すること

など、より複雑な生活関連動作や、その時の状況に対応する能力、社会的役割を担う能力など、さまざまな視点から評価されるものです。

 一般に「自立」という場合は、「生活的自立」を指し、評価する尺度として、基本的日常生活動作(BADL)のほか、手段的日常生活動作(IADL)などを含む老研式活動能力指標(表1)、JST版活動能力指標(リンク1参照)などがあります。

表1:老研式活動能力指標1)
手段的自立 1 バスや電車を使って1人で外出できますか
2 日用品の買い物ができますか
3 自分で食事の用意ができますか
4 請求書の支払いができますか
5 銀行貯金・郵便貯金の出し入れが自分でできますか
知的能動性 6 年金などの書類が書けますか
7 新聞を読んでいますか
8 本や雑誌を読んでいますか
9 健康についての記事や番組に関心がありますか
社会的役割 10 友だちの家を訪ねることがありますか
11 家族や友だちの相談にのることがありますか
12 病人を見舞うことがありますか
13 若い人に自分から話しかけることがありますか

注 : 各項目の「はい」が1点、「いいえ」を0点とし、13点満点として生活での自立を評価する。

出展:(古谷野 亘他:地域老人における活動能力の測定-老研式活動能力指標の開発- 日本公衆衛生雑誌 1987;34:109-114)

リンク1:JST版活動能力指標 利用マニュアル 社会技術研究開発センター(RISTEX)(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

精神的自立の尺度

 精神的自立の尺度には、2003年に鈴木、崎原らが開発した「精神的自立性尺度」があります(表2)。

表2:精神的自立性尺度2)
次にあげる項目について、あてはまる番号をそれぞれ1つずつ選んでください。
そう思う どちらかというとそう思う どちらかというとそう思わない そう思わない
趣味や楽しみ、好きでやることをもっている 1 2 3 4
これからの人生に目的をもっている 1 2 3 4
何か夢中になれることがある 1 2 3 4
何か人のためになることをしたい 1 2 3 4
人から指図されるよりは自分で判断して行動する方だ 1 2 3 4
状況や他人の意見に流されない方だ 1 2 3 4
自分の意見や行動には責任をもっている 1 2 3 4
自分の考えに自信をもっている 1 2 3 4

精神的自立の評価

 精神的自立は、前述の「精神的自立性尺度」から、評価することができます。自分の生き方や目標が明確であることを占める「目的志向性」と、自分自身が決定したことに対する責任を持つという「自己責任性」から判断します。

 しかし、これには「正解」はありません。点数が低くなる方が精神的には比較的自立していることになりますが、加齢との関係性は確認されていません。また、女性よりも男性の方がやや得点が高くなる傾向にあるようです。

高齢者の精神的自立と幸福感

 「精神的自立性尺度」に関して行われた研究では、精神的自立性は、高齢者の主観的な幸福感に、最も大きな影響をあたえる要因であることが示されています。一方、健康度の自己評価との関連についてみると、因果関係が逆になり、精神的に自立していると感じている人の方が、健康度の自己評価を高めることにつながっている可能性があります3)

 東京都内のある都市部では、精神的な自立を実感している人は、健康度の自己評価が高くなる傾向がありました。また農村部で行われた別の研究からも、身体的自立が低下しやすくなる高齢期には、精神的自立に対する身体的自立の関与が大きくなってくるものと考えられています。

 これらのことからも、精神的に自立している高齢者は、健康度に対する自己評価が高くなり、総じて幸福感を得やすいという傾向があるようです。

参考文献

  1. 古谷野 亘他:地域老人における活動能力の測定-老研式活動能力指標の開発- 日本公衆衛生雑誌 1987;34:109-114
  2. 精神的 自立性尺度の作成 ―その構成概念の妥当性と信頼性の検討― 鈴木征男 崎原盛造 民族衛生 第69巻 第2号(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. 精神的自立とその意義 ダイヤニュース No.58 公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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