健康長寿ネット

健康長寿ネットは高齢期を前向きに生活するための情報を提供し、健康長寿社会の発展を目的に作られた公益財団法人長寿科学振興財団が運営しているウェブサイトです。

サクセスフル・エイジング

幸福な老いとは

 だれもが幸福で生きがいに満ちた高齢期を迎えたいと思い、幸福に老いるための秘訣を知りたいと念願しています。この思いに応え、幸福な老い(サクセスフル・エイジング)の条件を明らかにするのは、社会老年学に課された究極の課題であるといってよいでしょう。ところが、この課題はまだ半分しか達成できていません。

 幸福な老いを定義しようとすると、どうしても抽象的で不毛な論争に終始することになりがちですから、社会老年学では、生活満足度やモラール(目標を達成しようとする意欲や態度)などの操作的概念によって幸福な老いの程度を測るという方法で、研究を進めてきました。

 本人(高齢者)の主観的な評価や感情(主観的幸福感)によって幸福な老いの程度を測り、その高低を決める条件を探ろうとしてきたのです。

主観的幸福感を決める要因は健康・経済的安定・家族

 生活満足度やモラールの高低に影響する要因は、どこで調べてもほぼ一定しています。日本の高齢者では、健康と経済的安定と家族(配偶者と子ども)の3つが、主観的幸福感の、したがって幸福な老いの程度を決める主要な条件であるとされています。家族以外の他者との人間関係は、研究によって、幸福感に影響するとされる場合とそうでない場合があります(リンク1参照)。

リンク1 「高齢者の生きがいと家族関係」

 しかし、よく考えてみますと、健康と経済と家族の3つは、高齢期を幸福にする条件であるよりは、不幸になるのを防止する条件でしかないことがわかります。

 もっともわかりやすいのは、経済的安定の場合でしょう。食うや食わずの状態になればたいていの人が不幸だと感じますが、多額の資産を蓄えてもそれだけで幸福になれるわけではありません。

 健康の場合も同様で、いくら健康であっても、それだけで幸福になれるわけではないのです。
 これまでの研究で明らかになっているのは、主として不幸になるのを防止する条件であって、幸福な老いをもたらす条件ではなかったのです。おそらく、高齢期を不幸なものにする条件が多くの人に共通であるのに対して、幸福だと感じさせる要因は人によってさまざまだからでしょう。社会老年学に課された究極の課題がまだ半分しか達成できていないというのは、このことのゆえです。

幸福な老いの条件―人類が経験したことのない新しい課題

 長寿と健康、そして経済的安定が、幸福な老いの前提条件であることはまず間違いのないところです。問題は、これらの条件のうえに、どのような高齢期の生活を作り上げるかです。21世紀初頭の日本に生きる私たちにとって、これは特に深刻な課題になっていると思われます。人類未到の長寿社会を実現し、経済的に安定した長い高齢期を可能にしながら、望ましい高齢期の生活像を見失ってしまったからです。

 健康で、貧困から自由な、長い、自立した高齢期を手にして、そこにどのような内実を与えていくかは、人類がいまだ経験したことのないまったく新しい課題、私たち自身で取り組まなければならない課題です。

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