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ファイトケミカルとは

公開日:2016年7月25日 21時30分
更新日:2023年8月 9日 14時24分

ファイトケミカルとは1)2)

写真:トマトやカボチャ、ニンジンなどの緑黄色野菜の写真。ファイトケミカルは植物に多く含まれていることを示す

 ファイトケミカル(phytochemical)とは、植物が紫外線や昆虫など、植物にとって有害なものから体を守るために作りだされた色素や香り、辛味、ネバネバなどの成分のことです。ファイトケミカルは必須栄養素ではないものの、体にとって良い作用をするため、健康を維持するためにはぜひ摂取したい重要な成分であることが明らかになってきています。

ファイトケミカルを摂ることの健康への効果1)2)4)

 ファイトケミカルの最も期待されている健康への効果は、抗酸化力です。

 ヒトは呼吸の際に酸素を利用しますが、取り込まれた酸素の一部は活性酸素やフリーラジカルという、体内の成分と反応しやすい状態になります。活性酸素やフリーラジカルは、タンパク質と反応してその機能を損なったり、脂質を酸化して過酸化脂質を生じさせたり、遺伝子の損傷を引き起こしたりすることで、老化、がん、動脈硬化、生活習慣病などの原因となると考えられています3)

 体内にも、活性酸素やフリーラジカルによる酸化を防止するメカニズムがありますが、抗酸化物質を摂取することで、酸化を防ぎ、老化やさまざまな病気のリスクを低下させることが期待されています。

注目されているファイトケミカル

 ファイトケミカルの中で注目されているポリフェノール、カロテノイド、含硫化物について解説します。表1に、主なファイトケミカルの種類と、含まれる主な食品をお示しします。

表1-1:注目されている主なファイトケミカル(ポリフェノール(フラボノイド系))1)
種類含まれる主な食品
アントシアニン類 ブルーベリー、ブドウ
イソフラボン類 大豆
フラボン類 セロリ、パセリ、ピーマン
フラバノール(カテキン)類 緑茶、果実類、カカオ
フラボノール類 ブロッコリー、タマネギ
フラバノン類 柑橘類の果皮
表1-2:注目されている主なファイトケミカル(カロテノイド)1)
種類含まれる主な食品
α-カロテン ニンジン、カボチャ
β-カロテン ニンジン、カボチャ、トマト
β-クリプトキサンチン ミカン、ホウレンソウ
リコペン トマト、スイカ
ルテイン ホウレンソウ、ブロッコリー
ゼアキサンチン カボチャ、トウモロコシ、モモ
表1-3:注目されている主なファイトケミカル(含硫化合物)1)
種類含まれる主な食品
イソチオシアネート系 ダイコン、ワサビ
システインスルホキシド系 タマネギ、キャベツ

ポリフェノール

写真:ブルーベリーの写真。赤ワインやブルーベリーに多く含まれるアントシアニンはファイトケミカルの代表的なポリフェノールの仲間であり、強い抗酸化作用のある

 抗酸化作用のあるファイトケミカルの代表がポリフェノールです。赤ワインやブルーベリーなどに含まれるアントシアニン、お茶などに含まれるカテキン類、コーヒーに含まれるクロロゲン酸などがポリフェノールの仲間で、ヒトの体内で強い抗酸化力を持つことが知られています。

写真:緑茶の写真。緑茶に含まれるカテキン類はファイトケミカルの代表的なポリフェノールの仲間であり、強い抗酸化作用のある

カロテノイド

 また、水に溶けやすい性質を持つポリフェノールに対し、脂溶性の性質を持っているファイトケミカルがカロテノイドです。カロテノイドには、ニンジンやカボチャなどに含まれるβ-カロテンの他に、トマトに多く含まれるリコピンや、ホウレンソウやブロッコリーに含まれるルテインなどがあります。

含硫化合物 

 抗酸化作用を持つファイトケミカルの他に、注目したいのがダイコンやワサビに含まれるイソチオシアネートや、玉ネギ、キャベツに含まれるシステインスルホキシドです。これらの化合物は、硫黄を含んでおり、辛みと強い刺激臭が特徴です。これらのファイトケミカルは、抗酸化作用も持っていますが、血行や血流の促進、強い抗菌作用、肝臓や消化管の解毒酵素の活性化などの効果があります。

その他のファイトケミカル

 その他に、大豆の渋み成分であるサポニンには抗酸化作用の他に、血中の脂質やコレステロールを低下させる効果があります。また、ハーブなどの香り成分であるテルペン類にも抗酸化作用があります。

ファイトケミカルを豊富に含む食品1)3)

 ファイトケミカルは、「植物に含まれる化学物質」ですので、当然植物性の食品に含まれている成分です。主に、植物の苦み、渋み、辛みや色素などに関与する成分ですので、色が鮮やかだったり、独特の風味を持っていたりする植物性の食品に多く含まれている場合が多いです。

 抗酸化力を示す指標の一つに、DPPHラジカル消去活性があります。さまざまな一般野菜(いも類を含む)のDPPHラジカル消去活性を比べたものを、図1・表1にお示しします。モロヘイヤやブロッコリーなどの緑の濃い野菜で抗酸化力が強いことがわかります。

※DPPHラジカル消去活性:
DPPH(ジフェニルピクリルヒドラジル)は不対電子をもつラジカルで活性酸素と同様に他の物質と反応し、酸化させる作用を持っています。DPPHは他の物質を酸化する能力を持っているときは「紫色」を示しますが、他の物質を酸化する能力がなくなると「紫色」を失う性質があります。つまりDPPHの紫色を消し去ることのできる物質は、DPPHの酸化能力をうばう、すなわち抗酸化力をもっていると判断できます。
図1:さまざまな一般野菜(いも類を含む)のDPPHラジカル消去活性を比較した棒グラフ。モロヘイヤやブロッコリーなどの緑の濃い野菜で抗酸化力が強いことをしめす
図1:DPPHラジカル消去活性(Trolox相当量:μmol/100g)5)
表1:DPPHラジカル消去活性(Trolox相当量:μmol/100g)5)
食品DPPHラジカル消去活性(Trolox相当量:μmol/100g)
きゅうり 23
小松菜 170
白うり 19
ズッキーニ 28
大根(浅尾大根) 49
トマト 43
野沢菜 133
ブロッコリー 388
ホウレンソウ 107
水菜 177
モロヘイヤ 2685
(スイートコーン) -
おひさまコーン 81
甘々嬢 173
ゴールドラッシュ 134
味来 131
(ジャガイモ) -
アンデスレッド 31
キタアカリ 80
男爵 61
デジマ 55
メ―クイン 52

 ファイトケミカルの中には、サプリメントとして市販されているものも多くあります。しかし、特定のファイトケミカルだけを多量に摂取するのではなく、できるだけ多くの種類のファイトケミカルを少しづつ摂取できるように、サプリメントではなく、多彩な食品をとりいれたバランスの良い食事をしっかり食べるようにしましょう。

 ファイトケミカルは、明らかにされているものだけでもおよそ1500種類あります。明らかにされていないものはまだ多くあることが推測されており、これからの研究が期待されています。

参考文献

  1. 一般社団法人全国発酵乳乳酸菌飲料協会 はっ酵乳、乳酸菌飲料公正取引協議会HP「ファイトケミカルが今、なぜ注目されているか」(一般社団法人全国発酵乳乳酸菌飲料協会 はっ酵乳、乳酸菌飲料公正取引協議会)
  2. 植物と乳酸菌のチカラ「注目の栄養素ファイトケミカルって?」 大塚チルド食品
  3. 植物と乳酸菌のチカラ「ファイトケミカルのはたらきって?」 大塚チルド食品
  4. 活性酸素と酸化ストレス e-ヘルスネット厚生労働省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  5. 研究報告書第1号(2006)山梨県総合理工学研究機構(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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