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三大栄養素のたんぱく質の働きと1日の摂取量

公開日:2016年7月25日 21時59分
更新日:2022年7月22日 10時41分

たんぱく質とは

 たんぱく質とはアミノ酸が多数結合した高分子化合物で、筋肉や臓器など体を構成する要素として非常に重要なものです。また、それだけでなく、たんぱく質は、アミノ酸の組み合わせや種類、量などの違いによって形状や働きが異なり、酵素やホルモン、免疫物質としてさまざまな機能を担っています。

たんぱく質の構成1)

 たんぱく質は20種類のアミノ酸から構成されています。アミノ酸のうち、バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、メチオニン、リジン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジンの9種類は、体内で必要量を合成できないため、食事から摂取する必要があります。これらのアミノ酸を必須アミノ酸といいます。体内で合成できる、非必須アミノ酸はグリシン、アラニン、グルタミン酸、グルタミン、セリン、アスパラギン酸、アスパラギン、チロシン、システイン、アルギニン、プロリンの11種類です。

必須アミノ酸

 バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、メチオニン、リジン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン

非必須アミノ酸

 グリシン、アラニン、グルタミン酸、グルタミン、セリン、アスパラギン酸、アスパラギン、チロシン、システイン、アルギニン、プロリン

たんぱく質の吸収と働き1)

 たんぱく質はアミノ酸に分解されて、吸収された後、体に必要なたんぱく質に再合成されます。ヒトの体の中には数万種類ものたんぱく質があり、それぞれが、異なる役割を持っています。酵素やホルモンとして代謝や体の機能を調節するもの、ヘモグロビンやトランスフェリンなど物質の輸送に関与するもの、γ-グロブリンなど免疫に関与するもの、アクチンやミオシンなど体を構成するものなど、どれも、生きていくためには欠かすことのできないものです。

 また、アミノ酸も、たんぱく質を構成するだけでなく、神経伝達物質やビタミンなどの生理活性物質の前駆体としても重要です。

たんぱく質の1日の摂取基準量1)

 日本人の食事摂取基準によると、一日に必要なたんぱく質は、18~49歳は、摂取エネルギーの13~20%、50~64歳は14~20%、65歳以上は15~20%が理想とされており、推奨量は、18~64歳の男性は一日65g、65歳以上の男性は60g、18歳以上の女性は一日50gとなっています(表1)。

表1:たんぱく質の食事摂取基準1)(推定平均必要量、推奨量、目安量:g/日、目標量:%エネルギー)
性別男性女性
年齢等推定平均必要量推奨量目安量目標量a(中央値b推定平均必要量推奨量目安量目標量a(中央値b
0~5(月) 10 10
6~8(月) 15 15
9~11(月) 25 25
1~2(歳) 15 20 13~20 15 20 13~20
3~5(歳) 20 25 13~20 20 25 13~20
6~7(歳) 25 30 13~20 25 30 13~20
8~9(歳) 30 40 13~20 30 40 13~20
10~11(歳) 40 45 13~20 40 50 13~20
12~14(歳) 50 60 13~20 45 55 13~20
15~17(歳) 50 65 13~20 45 55 13~20
18~29(歳) 50 65 13~20 40 50 13~20
30~49(歳) 50 65 13~20 40 50 13~20
50~64(歳) 50 65 14~20 40 50 14~20
65~74(歳)b 50 60 15~20 40 50 15~20
75以上(歳)b 50 60 15~20 40 50 15~20
妊婦(付加量)初期 +0 +0 c
妊婦(付加量)中期 +5 +5 c
妊婦(付加量)後期 +20 +25 d
授乳婦(付加量) +15 +20 d
  1. 範囲に関しては、おおむねの値を示したものであり、弾力的に運用すること。
  2. 65歳以上の高齢者について、フレイル予防を目的とした量を定めることは難しいが、身長・体重が参照体位に比べて小さい者や、特に75歳以上であって加齢に伴い身体活動量が大きく低下した者など、必要エネルギー摂取量が低い者では、下限が推奨量を下回る場合があり得る。この場合でも、下限は推奨量以上とすることが望ましい。
  3. 妊婦(初期・中期)の目標量は、13~20%エネルギーとした。
  4. 妊婦(後期)及び授乳婦の目標量は、15~20%エネルギーとした。
  • 推定平均必要量:半数の人が必要量を満たす量。
  • 推奨量:ほとんどの人が必要量を満たす量。
  • 目安量:一定の栄養状態を維持するのに十分な量であり、目安量以上を摂取している場合は不足のリスクはほとんどない。
  • 目標量:生活習慣病の予防のために現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量。

フレイル予防のために積極的に摂取したい栄養素

 フレイル予防のために積極的に摂取したい栄養素は主にたんぱく質、ビタミンD、カルシウムです。本稿では、たんぱく質について解説します。

 たんぱく質は、骨格筋量や筋力など、身体機能に大きく影響し、摂取量とフレイルのリスク低下との関連が見られることが分かっています。

良質のたんぱく質を含む食品とは?

 たんぱく質の摂取に関して、摂取量の他にもう一つ重要なのは、摂取するたんぱく質の質です。よく、「高齢者は、良質のたんぱく質を摂取しましょう」と言われますが、良質のたんぱく質とはどのようなものでしょうか。

 体の中で必要なたんぱく質を合成する際には、それぞれ構成するアミノ酸が決まっていますので、それに必要なアミノ酸がそろっていなければ、十分なたんぱく質を合成することができません。特に、必須アミノ酸は、体内では合成できないため、必要な分を食品から摂取しなければなりません。その必須アミノ酸がバランスよく含まれている食品が、良質のたんぱく質を含む食品というわけです。

 良質のたんぱく質の指標になるものが、体たんぱく合成に理想的なアミノ酸組成を示した、アミノ酸評点パターンです(表2)。たんぱく質の栄養価は、各必須アミノ酸について、評点パターンの数値を100としたときの割合で求められます。その食品の中で最も低いアミノ酸(第一制限アミノ酸)の値が、アミノ酸スコアとよばれ、その食品のたんぱく質の栄養価となります。

表2:18歳以上のアミノ酸評点パターン(㎎/g たんぱく質)1)
HisIleLeuLysSAAAAAThrTrpVal合計
15 30 59 45 22 38 23 6.0 39 277

His:ヒスチジン, Ile:イソロイシン, Leu:ロイシン, Lys:リシン, SAA:含硫アミノ酸, AAA:芳香族アミノ酸, Thr:トレオニン, Trp:トリプトファン, Val:バリン

 アミノ酸スコアは一般に肉、魚、卵、大豆、乳類で良好です。穀類の精白米や小麦は、リジン少なく、アミノ酸スコアが低くなります。しかし、穀類はリジンが豊富な動物性食品や豆類と一緒にとることで、必須アミノ酸のバランスがよくなります。

たんぱく質が不足するとどうなる2)

 たんぱく質は、体を作る構成要素であるだけでなく、酵素やホルモンなど体の機能を調節する大切な役割を果たしているため、不足すると、免疫機能が低下して抵抗力が弱くなり、さまざまな病気にかかりやすくなります。また、たんぱく質が不足すると筋力も低下します。特に、高齢者は、肉や魚の摂取量が少なくなり、たんぱく質が不足しがちなので、意識して、摂るように心がけましょう。歯が悪い人や飲み込む力の弱い人は、ひき肉を使う、材料を軟らかく煮る、飲み込みやすくとろみをつけるなどの工夫をするとよいでしょう。

たんぱく質を多く含む食品

たんぱく質を多く含む食品で、肉・魚・卵・乳製品を表す写真。たんぱく質は、アミノ酸が多数結合した高分子化合物で、筋肉や臓器など体を構成する要素として非常に重要です。アミノ酸の組み合わせや種類、量などの違いによって形状や働きが異なり、酵素やホルモン、免疫物質としてさまざまな機能を担っています。

 たんぱく質は、肉類・魚介類・卵類・乳類など動物性の食品のほか、豆類・穀類など植物性食品に多く含まれています。一般的に、動物性食品に含まれるたんぱく質の方が、アミノ酸スコアの高い良質のたんぱく質が多いですが、特定の食品に偏らないように、それぞれのたんぱく質をバランスよく食べるようにしましょう。

 一般的な食品スーパーなど身近なところで購入できる食品で、調理しやすく、日常的に摂取しやすい食品からたんぱく質を多く含む食品を表3から表8にまとめました。

表3:肉類に含まれるたんぱく質量3)4)より作成
食品名可食部100g当たりの成分量食品の目安重量(廃棄部分を含む)
たんぱく質(g)単位重量
にわとり 若どり ささみ 生 23.9 1枚 40g
ぶた 大型種肉 ロース 赤肉 生 22.7 1枚 200g
ぶた 大型種肉 ヒレ 赤肉 生 22.2 1枚 200g
ぶた 大型種肉 もも 赤肉 生 22.1 1枚 200g
にわとり 若どり むね 皮つき 生 21.3 1枚 250~300g
うし 交雑牛肉 もも 赤肉 生 19.3 1枚 200g
表4:魚介類に含まれるたんぱく質量3)4)より作成
食品名可食部100g当たりの成分量食品の目安重量(廃棄部分を含む)
たんぱく質(g)単位重量
加工品 かつお節 77.1 1食分 2.5g
うるめいわし 丸干し 45.0 1尾 11g
しらす干し 半乾燥品 40.5 大さじ1 5g
かつお 春獲り 生 25.8 1柵 250g
かつお 秋獲り 生 25.0 1柵 250g
まぐろ類 きはだ 生 24.3 1柵 150g
ごまさば 生 23.0 1切れ 100g
しろさけ 新巻き 生 22.8 1切れ 80~150g
ぶり 成魚 生 21.4 1切れ 80g
缶詰 油漬 フレーク ライト 17.7 小1缶 70g
焼き竹輪 12.2 大1本 70g
表5:卵類に含まれるたんぱく質量3)4)より作成
食品名可食部100g当たりの成分量食品の目安重量(廃棄部分を含む)
たんぱく質(g)単位重量
鶏卵 卵黄 生 16.5 1個 16g
うずら卵 全卵 生 12.6 1個 10~12g
鶏卵 全卵 ゆで 12.5 1個(Mサイズ殻付) 69g
鶏卵 全卵 生 12.2 1個(Mサイズ殻付) 60g
鶏卵 卵白 生 10.1 1個 35g
表6:乳類に含まれるたんぱく質量3)4)より作成
食品名可食部100g当たりの成分量食品の目安重量(廃棄部分を含む)
たんぱく質(g)単位重量
ナチュラルチーズ パルメザン 44.0 大さじ1 6g
プロセスチーズ 22.7 スライス1枚 18g
加工乳 低脂肪 3.8 コップ1杯 200g
ヨーグルト 全脂無糖 3.6 1カップ 210g
普通牛乳 3.3 コップ1杯 200g
表7:豆類に含まれるたんぱく質量3)4)より作成
食品名可食部100g当たりの成分量食品の目安重量(廃棄部分を含む)
たんぱく質(g)単位重量
油揚げ 生 23.4 1枚 20~30g
挽きわり納豆 16.6 1個 30~50g
がんもどき 15.3 1個 95~125g
生揚げ(厚揚げ) 10.7 1枚 120~140g
木綿豆腐 7.0 1丁 300~400g
おから 生 6.1 1カップ 100g
絹ごし豆腐 5.3 1丁 300~400g
豆乳 3.6 コップ1杯 200g
表8:穀類に含まれるたんぱく質量3)4)より作成
食品名可食部100g当たりの成分量食品の目安重量(廃棄部分を含む)
たんぱく質(g)単位重量
焼きふ 車ふ 30.2 1個 6g
えんばく オートミール 13.7 1カップ 80g
ロールパン 10.1 1個 30g
角形食パン 8.9 1枚(6枚切り) 60g
マカロニ・スパゲッティ ゆで 5.8 乾1人分 80g
そば ゆで 4.8 1玉 170g
うどん ゆで 2.6 1玉 170g
水稲めし 精白米 うるち米 2.5 小盛り1杯 100g
  • 可食部とは、食品全体あるいは購入形態から廃棄部位(頭部、内臓、骨、ひれ、皮や根、芯など)を除いたものです。
  • 調理法により食品の成分値、食品重量が変化します。食品重量については、例えばゆでる場合、食品の水分が流れ出て重量が減る食品とゆで湯を吸収して重量が増える食品がありますので、ゆで100gとは、生100gをゆでた場合の重量ではなくゆでた状態での100gです。
  • 加熱調理(ゆで、蒸し)をした食品は、ゆで汁(食塩水)は廃棄し、調味料は含まれていません。成分量は加熱調理後の可食部100g当たりの成分量となります。

たんぱく質を何からどれくらい食べたらよいのか

 たんぱく質を1日に何からどのくらい食べたらよいか摂取量の目安は、厚生労働省と農林水産省が作成した「食事バランスガイド」が参考になります。食事バランスガイドの活用法、1日の摂取量の目安について詳しくはリンク1、2をご覧ください。

リンク1 食事バランスガイドの活用法

リンク2 主菜(肉・魚・卵・大豆料理)の摂取量の目安

参考文献

  1. 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書 厚生労働省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. NHKクローズアップ現代、高齢者こそ肉を?! ~見過ごされる高齢者の"栄養失調"~ NHK(2013年11月12日(火)放送) (外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. 日本食品標準成分表・資源に関する取組 文部科学省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  4. 香川明夫(監修):八訂 食品成分表2021. 女子栄養大学出版部, 東京, 2021.

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