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ビタミンB1の働きと1日の摂取量

ビタミンB1とは

 水溶性ビタミンの仲間であるビタミンB1はビタミンの中で最初に発見されたものです。科学的にはチアミンという名称の化合物で、ブドウ糖をエネルギーに変換する際に必要な栄養素です。また、ビタミンB1には、チアミンにリン酸が一つ結合したチアミンモノリン酸(TMP)、二つ結合したチアミンジリン酸(TDP)、三つ結合したチアミントリリン酸(TTP)がありますが、それらの化合物は消化管でビタミンB1に消化された後、吸収されるため、ビタミン B1 と同等の活性を持ちます。

ビタミンB1の吸収と働き1)

 生細胞中では、ビタミンB1は主にチアミンにリン酸が二つ結合したTDPの形で、酵素タンパク質に結合して存在しています。食品が調理されたり消化されたりする際に酵素タンパク質が変性すると、酵素たんぱく質に結合していたTDPが遊離し、消化管内でフォスファターゼという酵素の働きによりリン酸が取れて、チアミンとなって、空腸と回腸で吸収されます。食品によっても異なりますが、食事中のビタミンB1の利用効率は約60%程度と推定されています。

 ブドウ糖がピルビン酸になるまでを解糖系といい、酸素を使わずにエネルギーを少し産生します。ピルビン酸はさらにアセチルCoA(コエンザイムA)になり、TCAサイクル(クエン酸回路)に入って酸素を消費して代謝されます。最終的には二酸化炭素と水になり、たくさんのエネルギーを産生します。ビタミンB1はピルビン酸からアセチルCoAに変わる際に必要な水溶性ビタミンです。

ビタミンB1の1日の摂取基準量2)

 ビタミンB1はエネルギー産生に関与していますので、推定平均必要量をエネルギー1,000kcalに対しチアミン塩酸塩で0.54mgとして算出されています。この推定平均必要量の値は、半数の人が必要を満たすと推定される量です。この推定平均必要量に推奨量算定係数の1.2を掛けた値が、推奨量となり、約97.5%の人が必要量を満たすと考えられる量になります。2015年版食事摂取基準では、一日の推奨量は、女性では18~49歳で1.1mg、50~69歳で1.0mg、70歳以上で0.9mg、男性では18~49歳で1.4mg、50~69歳で1.3mg、70歳以上で1.2mgとなっています(表)。

 また、糖質を多く摂る人や、よく体を動かす人は、エネルギーの産生が盛んなため、より多くのビタミンB1を必要としますので、特に不足しないように注意が必要です。

表:ビタミンB1の食事摂取基準(mg/日)a,2)
性別男性女性
年齢等推定平均必要量推奨量目安量推定平均必要量推奨量目安量
0~5(月) 0.1 0.1
6~11(月) 0.2 0.2
1~2(歳) 0.4 0.5 0.4 0.5
3~5(歳) 0.6 0.7 0.6 0.7
6~7(歳) 0.7 0.8 0.7 0.8
8~9(歳) 0.8 1.0 0.8 0.9
10~11(歳) 1.0 1.2 0.9 1.1
12~14(歳) 1.2 1.4 1.1 1.3
15~17(歳) 1.3 1.5 1.0 1.2
18~29(歳) 1.2 1.4 0.9 1.1
30~49(歳) 1.2 1.4 0.9 1.1
50~69(歳) 1.1 1.3 0.9 1.0
70以上(歳) 1.0 1.2 0.8 0.9
妊婦(付加量) +0.2 +0.2
授乳婦(付加量) +0.2 +0.2
  1. 身体活動レベル2の推定エネルギー必要量を用いて算定した。

特記事項:推定平均必要量は、ビタミンB1の欠乏症である脚気を予防するに足る最小必要量からではなく、尿中にビタミンB1の排泄量が増大し始める摂取量(体内飽和量)から算定。

  • 推定平均必要量:半数の人が必要量を満たす量。
  • 推奨量:ほとんどの人が必要量を満たす量。
  • 目安量:一定の栄養状態を維持するのに十分な量であり、目安量以上を摂取している場合は不足のリスクはほとんどない。

 ビタミンB1は、過剰に摂取しても余分なものは尿中に排泄され、比較的蓄積しにくいために、耐容上限量が設定されていません。しかし、サプリメントなどによって1日10gのチアミン塩酸塩を2週間半摂取し続けると、頭痛、いらだち、不眠、速脈、脆弱化(ぜいじゃくか:もろくてよわい)、接触皮膚炎、かゆみなどの症状が現れたという報告もあります。通常の食事をとっているだけであれば過剰症の心配はありませんが、サプリメントなどを利用する際は注意が必要です。

 日本人のビタミンB1の一日の平均摂取量は平成27年国民健康・栄養調査によると0.86mgでした。食品群別の摂取量の調査によると、主に肉類、穀類、野菜などから摂取されています3)

ビタミンB1が不足するとどうなる1)

 ビタミンB1が不足すると、ブドウ糖から十分にエネルギーを産生できなくなり、食欲不振、疲労、だるさなどの症状が現れます。また、脳はブドウ糖をエネルギー源としているため、ビタミンB1が不足するとエネルギーが不足し、脳や神経に障害を起こします。さらに、重症な場合は脚気(足の浮腫、しびれ、動悸・息切れ)やウェルニッケ・コルサコフ症候群(中枢神経が侵される障害)になり、重篤な場合は死亡することもあります。

 玄米が重要なビタミンB1の摂取源だった日本では、ぬかを取り除いた精白米を食べるようになった元禄時代以降、脚気にかかる人が多くなり、江戸患い(わずらい)とも呼ばれていました。現代でも、インスタント食品などの利用の増加により、ビタミンB1が不足し、脚気にかかる人もいます。

ビタミンB1を多く含む食品

ビタミンB1を多く含む食品の穀物類を表す写真。ビタミンB1はチアミンと呼ばれ、穀物に多く含まれる。日本人のビタミンB1の一日の平均摂取量は平成27年の調査によると0.86mgであり、肉類・穀物・野菜から摂取された。

 ビタミンB1は、肉類や魚類、中でも豚肉や魚の血合部分に多く含まれています。また、酵母、豆類などにも含まれています。穀類ではぬかや胚芽に多いため、精白米にするとビタミンB1の含有量は少なくなります。

 ビタミンB1はニンニクやタマネギなどに含まれているアリシンと結合してアリチアミンになると、吸収率が高くなります。しかし、熱に弱いため、調理による損失が大きいといった欠点があります。

参考文献

  1. 日本人の食事摂取基準(2015 年版)総論 ビタミン(水溶性ビタミン) 厚生労働省(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. 日本人の食事摂取基準(2015 年版)の概要 厚生労働省(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. 平成27年国民健康・栄養調査 厚生労働省 (PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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