ビタミンKの働きと1日の摂取量
公開日:2016年7月25日 21時51分
更新日:2021年9月15日 13時22分
ビタミンKとは1)
ビタミンKには多種類ありますが、天然のものはビタミンK1(フィロキノン)とビタミンK2(メナキノン類)の2種類のみです。ビタミンK1は植物の葉緑体で生産され、ビタミンK2は微生物から生産されます。
ビタミンK1は1種類ですが、ビタミンK2には何種類かの同族体が存在します。ビタミンK2のうち代表的なものは、動物性食品に含まれるメナキノン-4と納豆が産生するメナキノン-7です。一般にビタミンKというときには、フィロキノン、メナキノン-4、メナキノン-7を総称したものをいいます。
ビタミンKの吸収と働き1)
数種類あるビタミンKのうち、栄養学的に重要なものが、ビタミンK2のメナキノン類です。ビタミンK1のフィロキノンは組織内で酵素の働きによりメナキノン-4に変換されますが、その量はそれほど多くはないと見積もられています。
ビタミンKの主要な作用は、血液凝固に関与するものです。血液が凝固するのには、プロトロンビンなどの血液凝固因子が必要ですが、プロトロンビンが肝臓で生成されるときに、補酵素として働くのがビタミンKです。そのためビタミンKが欠乏すると血液中のプロトロンビンが減少し、血液凝固に時間がかかり、出血が止まりにくくなります。
また、ビタミンKは丈夫な骨づくりにも不可欠で、骨に存在するオステオカルシンというたんぱく質を活性化し、カルシウムを骨に沈着させて骨の形成を促す作用があります。そのため、骨粗鬆症の治療薬としてメナキノン-4が処方されています。そのほかに、動脈の石灰化を抑制する作用もあります。
ビタミンKの1日の摂取基準量1)
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、ビタミンKの成人の1日の摂取の目安量を男女ともに150㎍に設定しています。ビタミンKは多量に摂取しても健康被害が見られないことから、上限量は設定されていません(表1)。
性別 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
年齢等 | 目安量 | 目安量 |
0~5(月) | 4 | 4 |
6~11(月) | 7 | 7 |
1~2(歳) | 50 | 60 |
3~5(歳) | 60 | 70 |
6~7(歳) | 80 | 90 |
8~9(歳) | 90 | 110 |
10~11(歳) | 110 | 140 |
12~14(歳) | 140 | 170 |
15~17(歳) | 160 | 150 |
18~29(歳) | 150 | 150 |
30~49(歳) | 150 | 150 |
50~64(歳) | 150 | 150 |
65~74(歳) | 150 | 150 |
75以上(歳) | 150 | 150 |
妊婦 | 150 | |
授乳婦 | 150 |
- 目安量:一定の栄養状態を維持するのに十分な量であり、目安量以上を摂取している場合は不足のリスクはほとんどない。
- 摂取基準量の単位㎍は100万分の1グラムを表します。
血栓を防ぐためのワ-ファリンという薬を服用している人の場合、ビタミンKを多く含む納豆、ブロッコリー、ほうれん草などの食品を摂取すると薬の作用が弱まることから、摂取を制限されることがあります。
ビタミンKが不足するとどうなるか1)
ビタミンKはさまざまな食品中に広く含まれますし、ビタミンK2は腸内細菌によっても合成されるので、健常人では不足することは稀です。しかし、新生児では腸内細菌からのビタミンK2供給が少ないため、ビタミンK欠乏による新生児メレナ(消化管出血)や特発性乳児ビタミンK欠乏症(頭蓋内出血)を起こすことがあります。
ビタミンKの吸収は胆汁の存在のもとに小腸上部で行われているため、加齢により膵液や胆汁の分泌量が低下すると、腸管からのビタミンKの吸収量が減少します。また、抗生物質の長期投与でメナキノン類を産生する腸内細菌が死滅してしまったり、ビタミンKを活性化させる酵素の活性が低下したりすることがあります。そのため、高齢者では、ビタミンK欠乏となる可能性があるため、注意が必要です。
ビタミンKを多く含む食品2)
ビタミンKは、藻類、野菜類、豆類、肉類、乳類、卵類、油脂類に多く含まれています。ビタミンK1は、海藻、しそやモロヘイヤなどの緑黄色野菜に多く含まれています。ビタミンK2は、発酵食品の納豆に特に多く含まれます。そのため、納豆を日常的に食べている人は、食べていない人と比べてビタミンKの摂取量が約2倍であるという調査結果もあります。脂溶性なので、油と一緒にとると吸収率が上がります。

令和元年国民健康・栄養調査における日本人のビタミンKの1日の平均の摂取量は240.2㎍(マイクログラム)で、食品群別の摂取量で見ると、野菜類からの摂取が最も多く、次いで豆類、油脂類、肉類の順に多く摂取されています。
一般的な食品スーパーなど身近なところで購入できる食品で、調理しやすく、日常的に摂取しやすい食品からビタミンKを多く含む食品を表2から表8にまとめました。
食品名 | 可食部100g当たりの成分量 | 食品の目安重量(廃棄部分を含む) | |
---|---|---|---|
ビタミンK(㎍) | 単位 | 重量 | |
あまのり ほしのり | 2,600 | 1枚 | 2g |
いわのり 素干し | 1,700 | 1枚 | 3g |
カットわかめ 乾 | 1,600 | 1人分 | 10g |
あまのり 味付けのり | 650 | 1人分 | 3g |
ほしひじき ステンレス釜・鉄釜 乾 | 580 | 大さじ1 | 2g |
食品名 | 可食部100g当たりの成分量 | 食品の目安重量(廃棄部分を含む) | |
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ビタミンK(㎍) | 単位 | 重量 | |
パセリ 葉 生 | 850 | 1枝 | 15g |
しそ 葉 生 | 690 | 10枚 | 7g |
モロヘイヤ 茎葉 生 | 640 | 1束 | 100g |
バジル 葉 生 | 440 | 1枝 | 5g |
かぶ 葉 生 | 340 | 1個 | 80g |
ほうれんそう 葉 通年平均 生 | 270 | 1株 | 20g |
- 可食部とは、食品全体あるいは購入形態から廃棄部位(野菜の皮や根、芯など)を除いたものです。
食品名 | 可食部100g当たりの成分量 | 食品の目安重量(廃棄部分を含む) | |
---|---|---|---|
ビタミンK(㎍) | 単位 | 重量 | |
挽きわり納豆 | 930 | 1パック | 30~50g |
糸引き納豆 | 600 | 1パック | 30~50g |
油揚げ 生 | 67 | 1枚 | 20~30g |
がんもどき | 43 | 1個 | 95~125g |
生揚げ | 25 | 1枚 | 120~140g |
食品名 | 可食部100g当たりの成分量 | 食品の目安重量(廃棄部分を含む) | |
---|---|---|---|
ビタミンK(㎍) | 単位 | 重量 | |
にわとり 皮 もも 生 | 120 | 1枚 | 30~40g |
にわとり 皮 むね 生 | 110 | 1枚 | 30~40g |
にわとり 心臓(ハツ) 生 | 51 | 1個 | 15~20g |
にわとり [若鶏肉] 手羽さき 皮つき 生 | 45 | 1本(骨付き) | 60g |
にわとり [若鶏肉] 手羽もと 皮つき 生 | 39 | 1本(骨付き) | 45~60g |
にわとり [若鶏肉] もも 皮つき 生 | 29 | 1枚 | 200~300g |
食品名 | 可食部100g当たりの成分量 | 食品の目安重量(廃棄部分を含む) | |
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ビタミンK(㎍) | 単位 | 重量 | |
ナチュラルチーズ パルメザン | 15 | 大さじ1 | 6g |
ナチュラルチーズ チェダー | 12 | スライス1枚 | 18g |
ナチュラルチーズ クリーム | 12 | 大さじ1 | 13g |
ナチュラルチーズ マスカルポーネ | 10 | 大さじ1 | 13g |
ナチュラルチーズ モッツァレラ | 6 | 1切れ | 18g |
普通牛乳 | 2 | コップ1杯 | 200g |
食品名 | 可食部100g当たりの成分量 | 食品の目安重量(廃棄部分を含む) | |
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ビタミンK(㎍) | 単位 | 重量 | |
鶏卵 卵黄 生 | 39 | 1個 | 16g |
うずら卵 全卵 生 | 15 | 1個 | 10~12g |
鶏卵 全卵 生 | 12 | 1個(Mサイズ殻付) | 60g |
鶏卵 卵白 生 | 1 | 1個 | 35g |
食品名 | 可食部100g当たりの成分量 | 食品の目安重量(廃棄部分を含む) | |
---|---|---|---|
ビタミンK(㎍) | 単位 | 重量 | |
大豆油 | 210 | 大さじ1 | 12g |
ぶどう油 | 190 | 大さじ1 | 12g |
調合油(なたね油1:大豆油1) | 170 | 大さじ1 | 12g |
なたね油(キャノーラ油) | 120 | 大さじ1 | 12g |
オリーブ油 | 42 | 大さじ1 | 12g |
参考文献
- 香川明夫(監修):八訂 食品成分表2021. 女子栄養大学出版部, 東京, 2021.