食物繊維の働きと1日の摂取量
公開日:2016年7月25日 21時55分
更新日:2021年9月22日 13時07分
食物繊維とは
食物繊維は「ヒトの消化酵素で分解されない食物中の総体」と定義されています。水に溶ける水溶性食物繊維と、溶けない不溶性食物繊維とに大別されます。食物繊維の多くは、単糖がたくさん結合した多糖類の仲間ですが、消化されないため、エネルギー源にはなりません。
食物繊維の種類1)
水溶性食物繊維には果物や野菜に含まれるペクチン、コンブやワカメなどのぬるぬるの成分のアルギン酸などがあります。
不溶性食物繊維には、植物の細胞壁を構成しているセルロースやヘミセルロース、リグニンなどがあります。カニやエビの殻に含まれるキチンも不溶性食物繊維に分類されます。
食物繊維の吸収と働き1)
水溶性食物繊維も不溶性食物繊維もどちらも体内には吸収されませんが、健康のためには重要な役割を果たしており、第六の栄養素ともいわれ注目されています。
水溶性食物繊維は、水に溶けやすく、水に溶けるとゼリー状になります。小腸での栄養素の吸収の速度を緩やかにし、食後の血糖値の上昇を抑える効果があります。また、コレステロールを吸着し体外に排出することで血中のコレステロール値も低下させます。さらに、ナトリウムを排出する効果もあるので、高血圧を予防する効果もあります。食物繊維は低カロリーで肥満の予防にもなるので、糖尿病、脂質異常症、高血圧、動脈硬化など、さまざまな生活習慣病の予防に効果があります。
水に溶けにくい不溶性食物繊維は、水分を吸収して便の容積を増やします。便が増えると、大腸が刺激され、排便がスムーズになります。また、有害物質を吸着させて、便と一緒に体の外に排出するため、腸をきれいにして大腸がんのリスクを減らしてくれます。
また、どちらの食物繊維も大腸内の細菌により発酵・分解され、ビフィズス菌などの善玉腸内細菌の餌になるため、善玉菌が増え、腸内環境が改善されます。
1日の摂取基準量1)
生活習慣病の発症予防の観点から考えると、成人では、食物繊維を一日24g以上、できれば1,000㎉あたり14g以上摂取するのが理想とされています。しかし、令和元年国民健康・栄養調査によると、実際の食品群別摂取量は18.4gで、食品群別に摂取量の内訳をみると、穀類からの摂取量が最も多く、次いで野菜類、いも類、豆類と果実類でした。
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、目標量として男性18~64歳は一日に21g以上、65歳以上は20g以上、女性18~64歳は一日に18g以上、65歳以上は17g以上と設定されています(表1)。
性別 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
年齢等 | 目標量 | 目標量 |
0~5(月) | - | - |
6~11(月) | ― | ― |
1~2(歳) | - | - |
3~5(歳) | 8以上 | 8以上 |
6~7(歳) | 10以上 | 10以上 |
8~9(歳) | 11以上 | 11以上 |
10~11(歳) | 13以上 | 13以上 |
12~14(歳) | 17以上 | 17以上 |
15~17(歳) | 19以上 | 18以上 |
18~29(歳) | 21以上 | 18以上 |
30~49(歳) | 21以上 | 18以上 |
50~64(歳) | 21以上 | 18以上 |
65~74(歳) | 20以上 | 17以上 |
75以上(歳) | 20以上 | 17以上 |
妊婦 | 18以上 | |
授乳婦 | 18以上 |
- 目標量:生活習慣病の予防のために現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量。
食物繊維が不足するとどうなる1)
食物繊維が不足すると、腸内環境の悪化によって便秘になりやすくなります。その結果、痔になったり、大腸癌のリスクが高まったりします。また、糖尿病などの生活習慣病のリスクも高くなります。そのほかにも、食物繊維の多い食品は、低カロリーの上に噛み応えもあり、食べた時の満足感も高いため、食物繊維の多い食事をとることで肥満も防ぐことができます。
通常の食事では食物繊維の過剰摂取の心配はなく、むしろ、現在の日本人は、食物繊維が不足ぎみなので、意識してとる必要があります。しかし、サプリメントなどの健康食品を利用する際は、飲みすぎるとおなかが緩くなったり、他の栄養素の吸収を妨げたりする可能性があるため、注意が必要です。
食物繊維を多く含む食品2)
食物繊維は、野菜類、穀類、豆類、きのこ類、いも及びでん粉類に多く含まれています。食品の中には、水溶性と不溶性両方の食物繊維を含む食品もあります。特に納豆は水溶性と不溶性の食物繊維がバランスよく含まれている食品です。食物繊維は種類によって生理作用が違いますので、不溶性・水溶性のどちらか一方を摂取するのではなく、さまざまな食品を組み合わせて両方をバランスよく摂取することが大切です。
一般的な食品スーパーなど身近なところで購入できる食品で、調理しやすく、日常的に摂取しやすい食品から食物繊維を多く含む食品を表2から表6にまとめました。
食品名 | 可食部100g当たりの成分量 | 食品の目安重量(廃棄部分を含む) | |||
---|---|---|---|---|---|
水溶性食物繊維(g) | 不溶性食物繊維(g) | 食物繊維総量(g) | 単位 | 重量 | |
切干しだいこん 乾 | 5.2 | 16.1 | 21.3 | 1食分 | 10g |
しそ 葉 生 | 0.8 | 6.5 | 7.3 | 10枚 | 7g |
モロヘイヤ 茎葉 生 | 1.3 | 4.6 | 5.9 | 1束 | 100g |
ごぼう 根 生 | 2.3 | 3.4 | 5.7 | 1本 | 180g |
ブロッコリー 花序 生 | 0.9 | 4.3 | 5.1 | 1株 | 250g |
だいこん 葉 生 | 0.8 | 3.2 | 4.0 | 1本分(根中1本800g) | 150g |
あさつき 葉 生 | 0.7 | 2.6 | 3.3 | 1わ | 25g |
日本かぼちゃ 果実 生 | 0.7 | 2.1 | 2.8 | 1個 | 1~1.5kg |
ほうれんそう 葉 通年平均 生 | 0.7 | 2.1 | 2.8 | 1株 | 20g |
サニーレタス 葉 生 | 0.6 | 1.4 | 2.0 | 1枚 | 30g |
- 可食部とは、食品全体あるいは購入形態から廃棄部位(野菜の皮や根、芯など)を除いたものです。
食品名 | 可食部100g当たりの成分量 | 食品の目安重量(廃棄部分を含む) | |||
---|---|---|---|---|---|
水溶性食物繊維(g) | 不溶性食物繊維(g) | 食物繊維総量(g) | 単位 | 重量 | |
ライ麦パン | 2.0 | 3.6 | 5.6 | 1枚(6枚切り) | 60g |
角型食パン | 0.4 | 1.9 | 2.2 | 1枚(6枚切り) | 60g |
水稲めし 発芽玄米 | 0.2 | 1.6 | 1.8 | 小盛り1杯 | 100g |
蒸し中華めん | 0.7 | 1.1 | 1.7 | 1袋 | 150g |
マカロニ・スパゲッティ ゆで | 0.5 | 1.2 | 1.7 | 乾1人分 | 80g |
水稲めし 精白米 うるち米 | 0.0 | 0.3 | 0.3 | 小盛り1杯 | 100g |
- 加熱調理(ゆで、蒸し)をした食品は、ゆで汁(食塩水)は廃棄し、調味料は含まれていません。成分量は加熱調理後の可食部100g当たりの成分量となります。
食品名 | 可食部100g当たりの成分量 | 食品の目安重量(廃棄部分を含む) | |||
---|---|---|---|---|---|
水溶性食物繊維(g) | 不溶性食物繊維(g) | 食物繊維総量(g) | 単位 | 重量 | |
いんげんまめ 全粒 ゆで | 1.5 | 12.0 | 13.6 | 1食分 | 40g |
あずき 全粒 ゆで | 0.8 | 11.3 | 12.1 | 1カップ | 170g |
だいず おから 生 | 0.4 | 11.1 | 11.5 | 1カップ | 100g |
だいず 糸引き納豆 | 2.3 | 4.4 | 6.7 | 1個 | 30~50g |
だいず 全粒 国産 黄大豆 ゆで | 0.9 | 5.8 | 6.6 | 1パック | 100g |
だいず がんもどき | 0.6 | 0.8 | 1.4 | 1個 | 95~125g |
だいず 油揚げ 生 | 0.5 | 0.8 | 1.3 | 1枚 | 20~30g |
- 「食品成分表」には、生の状態だけではなく、「ゆで」「焼き」「油いため」など調理した状態に分類した成分値も収載されています。調理法により食品の成分値、食品重量が変化します。食品重量については、例えばゆでる場合、食品の水分が流れ出て重量が減る食品とゆで湯を吸収して重量が増える食品がありますので、ゆで100gとは、生100gをゆでた場合の重量ではなくゆでた状態での100gです。
食品名 | 可食部100g当たりの成分量 | 食品の目安重量(廃棄部分を含む) | |||
---|---|---|---|---|---|
水溶性食物繊維(g) | 不溶性食物繊維(g) | 食物繊維総量(g) | 単位 | 重量 | |
きくらげ 乾 | 0.0 | 57.4 | 57.4 | 乾10個 | 5g |
しいたけ 乾しいたけ 乾 | 2.7 | 44.0 | 46.7 | 大1個 | 5g |
しいたけ 生しいたけ 菌床栽培 生 | 0.4 | 4.1 | 4.6 | 1枚 | 10~30g |
えのきたけ 生 | 0.4 | 3.5 | 3.9 | 1袋 | 100g |
まいたけ 生 | 0.3 | 3.2 | 3.5 | 1パック | 100g |
ぶなしめじ 生 | 0.3 | 3.2 | 3.5 | 1パック | 100g |
- 可食部とは、食品全体あるいは購入形態から廃棄部位(いしづき)を除いたものです。
食品名 | 可食部100g当たりの成分量 | 食品の目安重量(廃棄部分を含む) | |||
---|---|---|---|---|---|
水溶性食物繊維(g) | 不溶性食物繊維(g) | 食物繊維総量(g) | 単位 | 重量 | |
はるさめ 緑豆はるさめ 乾 | Tr※ | 4.1 | 4.1 | 1食分 | 15g |
こんにゃく 板こんにゃく 生いもこんにゃく | Tr※ | 3.0 | 3.0 | 1枚 | 170~200g |
さつまいも 塊根 皮つき 生 | 0.9 | 1.8 | 2.8 | 中1本 | 200~250g |
さといも 球茎 生 | 0.8 | 1.5 | 2.3 | 1個 | 50g |
※ Tr(微量、トレース)は最小記載量の1/10以上含まれているが5/10未満であることを示す。
- 可食部とは、食品全体あるいは購入形態から廃棄部位(皮など)を除いたものです。

野菜は生のままでは、かさが多く量を摂ることができないので、煮たりゆでたりしてかさを減らしたほうが効率的に食物繊維を摂取できます。また、精製度の高い穀類より、未精製の全粒粉や玄米などには食物繊維が多く含まれているので、これらを主食として食事にとり入れるとよいでしょう。

参考文献
- 香川明夫(監修):八訂 食品成分表2021. 女子栄養大学出版部, 東京, 2021.