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ビタミンAの働きと1日の摂取量

公開日:2016年7月25日 21時54分
更新日:2023年8月23日 09時55分

ビタミンAとは

 ビタミンAとは、レチノール、レチナール、レチノイン酸の総称で、脂溶性ビタミンに分類されます。

 また、植物に含まれるβ(ベータ)-カロテンは、摂取すると、小腸上皮細胞でビタミンAに変換されるのでプロビタミンA(ビタミンA前駆体)と呼ばれ、ビタミンAの仲間に分類されます。

ビタミンAの吸収と働き1)

 ビタミンAの主要な成分であるレチノールには、目や皮膚の粘膜を健康に保ったり、抵抗力を強めたりする働きがあります。また、レチノールは、視細胞での光刺激反応に関与するロドプシンという物資の合成に必要なため、薄暗いところで視力を保つ働きもあります。最近ではレチノールが上皮細胞で発癌物質の効果を軽減するといわれています2)

 一方、プロビタミンAであるカロテンにはβ(ベータ)型の他にα(アルファ)型、γ(ガンマ)型、クリプトキサンチンなどがありますが、ビタミンAの効果が最も高いのはβ-カロテンです。とはいっても、β-カロテンもすべてがビタミンAに変換されるわけではなく、吸収効率やビタミンAへの変換率を考慮すると、β-カロテンはレチノールの6分の1の効力に相当すると見積もられます。

ビタミンAの1日の摂取基準量1)

 ビタミンAの摂取基準には、レチノールだけでなくビタミンAの前駆体すべて合わせて、レチノール活性当量(RAE)として算出した値を用います。

 レチノール活性当量は以下の式で求めます。

レチノール活性当量(㎍RAE)=レチノール(㎍)+β-カロテン(㎍)×1/12+α-カロテン(㎍)×1/24+β-クリプトキサンチン(㎍)×1/24+その他のプロビタミンAカロテノイド(㎍)×1/24

 表1-1、1-2に示すように、厚生労働省発表の日本人の食事摂取基準(2020年版)によると一日当たりのビタミンAの推定平均必要量は50~64歳の男性で650㎍RAE、女性で500㎍RAE、65~74歳の男性で600㎍RAE、女性で500㎍RAE、75歳以上の男性で550㎍RAE、女性で450㎍RAE、推奨量は50~64歳の男性で900㎍RAE、女性で700㎍RAE、65~74歳の男性で850㎍RAE、女性で700㎍RAE、75歳以上の男性で800㎍RAE、女性で650㎍RAEとなっています。「推定平均必要量」は50%の人が必要量を満たす量(50%が欠乏、50%が充足)で科学的に根拠があるもの、「推奨量」はほとんどの人が必要量を満たす量(97.5%が充足)なので、推奨量を満たすことが望ましいといえます(表1-1、1-2)。

 また、ビタミンAは脂溶性ビタミンであるため、体内に蓄積しやすく、過剰摂取の害が知られています。そのため、食事摂取基準では上限値(耐容上限量)が定められています。

表1-1:ビタミンAの食事摂取基準(男性)(㎍RAE/日)a,1)
年齢等推定平均必要量b推奨量b目安量c耐容上限量c
0~5(月) 300 600
6~11(月) 400 600
1~2(歳) 300 400 600
3~5(歳) 350 450 700
6~7(歳) 300 400 950
8~9(歳) 350 500 1,200
10~11(歳) 450 600 1,500
12~14(歳) 550 800 2,100
15~17(歳) 650 900 2,500
18~29(歳) 600 850 2,700
30~49(歳) 650 900 2,700
50~64(歳) 650 900 2,700
65~74(歳) 600 850 2,700
75以上(歳) 550 800 2,700
表1-2:ビタミンAの食事摂取基準(女性)(㎍RAE/日)a,1)
年齢等推定平均必要量b推奨量b目安量c耐容上限量c
0~5(月) 300 600
6~11(月) 400 600
1~2(歳) 250 350 600
3~5(歳) 350 500 850
6~7(歳) 300 400 1,200
8~9(歳) 350 500 1,500
10~11(歳) 400 600 1,900
12~14(歳) 500 700 2,500
15~17(歳) 500 650 2,800
18~29(歳) 450 650 2,700
30~49(歳) 500 700 2,700
50~64(歳) 500 700 2,700
65~74(歳) 500 700 2,700
75以上(歳) 450 650 2,700
妊婦(付加量)初期 +0 +0
妊婦(付加量)中期 +0 +0
妊婦(付加量)後期 +60 +80
授乳婦(付加量) +300 +450
  1. レチノール活性当量(㎍RAE)=レチノール(㎍)+β-カロテン(㎍)×1/12+α-カロテン(㎍)×1/24+β-クリプトキサンチン(㎍)×1/24+その他のプロビタミンAカロテノイド(㎍)×1/24
  2. プロビタミンAカロテノイドを含む。
  3. プロビタミンAカロテノイドを含まない。
  • 推定平均必要量:半数の人が必要量を満たす量。
  • 推奨量:ほとんどの人が必要量を満たす量。
  • 目安量:一定の栄養状態を維持するのに十分な量であり、目安量以上を摂取している場合は不足のリスクはほとんどない。
  • 耐容上限量:過剰摂取による健康障害を未然に防ぐ量。

 日本人のビタミンAの一日の平均摂取量は令和元年国民健康・栄養調査による534.1㎍RAEでした。食品群別の摂取量で見ると、野菜類からの摂取量が最も多く、次いで肉類、卵類、乳類の順に多く摂取されています3)

ビタミンAが不足するとどうなるか1)

 ビタミンAが不足すると暗順応障害が起こり薄暗いところでものが見にくくなり、やがて夜盲症になります。また、角膜や結膜上皮が乾燥し、角質化するほか、皮膚や粘膜でも、乾燥、肥厚、角質化が起こります。小児の場合は成長が停止する場合もあります。

 反対に脂溶性ビタミンである、ビタミンAは過剰に摂取しても、健康障害が起こることが知られています。ビタミンA過剰症の症状として、頭痛が特徴的であるほか、急性の過剰症としては脳脊髄液圧の上昇や、慢性的な過剰症として、頭蓋内圧亢進症や皮膚のはげ落ち、口唇炎、脱毛症、食欲不振、筋肉痛などの症状が見られることが知られています。

 ビタミンAの過剰症は通常の食事ではほとんど起こりませんが、サプリメントを利用したり、ビタミンAを特に多く含むレバーを過剰に食べたりする際は注意しましょう。また、β-カロテンからのビタミンAへの変換は必要に応じて厳密に調節されているため、β-カロテンによるビタミンAの過剰症は起こらないとされています。

ビタミンAを多く含む食品

 ビタミンAの摂取基準は、レチノールだけでなくビタミンAの前駆体すべて合わせて、レチノール活性当量として算出した値を用いられています。ビタミンA(レチノール活性当量)は肉類、魚介類、乳類、卵類、油脂類、藻類、野菜類などに多く含まれています。

 一般的な食品スーパーなど身近なところで購入できる食品で、調理しやすく、日常的に摂取しやすい食品からビタミンA(レチノール活性当量)を多く含む食品を表2から表8にまとめました。

表2:肉類に含まれるビタミンA(レチノール活性当量)(㎍)(可食部100g当たり)4)5)より作成
食品名レチノール活性当量(㎍)食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量)
ぶた スモークレバー 17,000 1食分:100g
にわとり 肝臓(レバー) 生 14,000 1人前:100g
ぶた 肝臓(レバー) 生 13,000 1人前:100g
ぶた レバーペースト 4,300 大さじ1:12g
うし 肝臓(レバー) 生 1,100 1人前:100g
表3:魚介類に含まれるビタミンA(レチノール活性当量)(㎍)(可食部100g当たり)4)5)より作成
食品名レチノール活性当量(㎍)食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量)
うなぎ かば焼 1,500 1串:100g
ぎんだら 生 1,500 1切れ:130g
ほたるいか 生 1,500 1ぱい:6g
あなご 生 500 1尾(開き身):70g
しらす干し 半乾燥品 240 大さじ1:5g
すずき 生 180 1切れ:80g
  • 可食部とは、食品全体あるいは購入形態から廃棄部位(頭部、内臓、骨、ひれなど)を除いたものです。
ビタミンAのレチノールが多く含まれるうなぎのかば焼き写真。
表4:乳類に含まれるビタミンA(レチノール活性当量)(㎍)(可食部100g当たり)4)5)より作成
食品名レチノール活性当量(㎍)食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量)
ナチュラルチーズ マスカルポーネ 390 大さじ1:13g
ナチュラルチーズ チェダー 330 スライス1枚:18g
プロセスチーズ 260 1切れ:18g
ナチュラルチーズ パルメザン 240 大さじ1:6g
普通牛乳 38 コップ1杯:200g
ヨーグルト 全脂無糖 33 1カップ:210g
ビタミンAのレチノールが多く含まれる牛乳やチーズの乳製品と卵の写真。ビタミンAの主要な成分であるレチノールには、目や皮膚の粘膜を健康に保ったり、抵抗力を強めたりする働きがあります。
表5:油脂類に含まれるビタミンA(レチノール活性当量)(㎍)(可食部100g当たり)4)5)より作成
食品名レチノール活性当量(㎍)食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量)
食塩不使用バター 800 大さじ1:12g
発酵バター(有塩) 780 大さじ1:12g
有塩バター 520 大さじ1:12g
表6:卵類に含まれるビタミンA(レチノール活性当量)(㎍)(可食部100g当たり)4)5)より作成
食品名レチノール活性当量(㎍)食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量)
鶏卵 卵黄 生 690 1個:16g
うずら卵 全卵 生 350 1個:10~12g
鶏卵 全卵 生 210 1個(Mサイズ殻付):60g
表7:藻類に含まれるビタミンA(レチノール活性当量)(㎍)(可食部100g当たり)4)5)より作成
食品名レチノール活性当量(㎍)食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量)
あまのり ほしのり 3,600 1枚:2g
あまのり 味付けのり 2,700 1人分:3g
あまのり 焼きのり 2,300 1枚:2g
ほしひじき ステンレス釜・鉄釜 乾 360 大さじ1:2g
あおさ 素干し 220 小さじ1:2g
カットわかめ 乾 190 1人分:10g
表8:野菜類に含まれるビタミンA(レチノール活性当量)(㎍)(可食部100g当たり)4)5)より作成
食品名レチノール活性当量(㎍)食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量)
しそ 葉 生 880 10枚:7g
モロヘイヤ 茎葉 生 840 1束:100g
にんじん 根 皮つき 生 720 1本:150g
しゅんぎく 葉 生 380 1束:200g
ほうれんそう 葉 通年平均 生 350 1株:20g
西洋かぼちゃ 果実 生 330 1個:1~1.5kg
こまつな 葉 生 260 1株:40g
  • 可食部とは、食品全体あるいは購入形態から廃棄部位(野菜の皮や根、芯など)を除いたものです。
プロビタミンA(ビタミンA前駆体)のβ-カロテンが多く含まれるにんじんの写真。
プロビタミンA(ビタミンA前駆体)のβ-カロテンを多く含むかぼちゃの写真。ビタミンAは脂溶性ビタミンであるため、体内に蓄積されやすく、過剰摂取の害が知られていますので、1日当たりの摂取量と上限が定められています。

食品に含まれる成分について

 食品に含まれる成分は、食品成分データベース 文部科学省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)から検索が行えます。

 食品成分データベースは、「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をデータソースとして、食品成分に関するデータをインターネットを通じて提供しているものです。

 下記のようなさまざまな情報を知ることができます。

  • 日・月・年単位の期間内で検索の多い食品のアクセスランキング
  • 各栄養素を多く含む食品成分ランキング
  • 食品群名/食品名、可食部100gあたりの成分表(一般成分-無機質-ビタミン類-アミノ酸-脂肪酸-炭水化物-有機酸等)など食品の詳細について掲載。重量を変更し、お好みの量で表示が可能
  • 日常の食生活において複数の食品を組み合わせた場合の成分値の表示が可能

複数の食品の成分を検索する方法

 複数の食品の成分を検索する方法についてご紹介します。

  1. 「フリーワードで検索」において食品名を入力するとワードに合致する食品がチェックリストで表示されます。本来検索したい食品以外も表示される場合がありますので、該当する食品を選択してください。
  2. 検索結果で表示される成分項目は、一般成分の基本成分である廃棄率、エネルギー(kcal)、水分、たんぱく質、脂質、炭水化物、灰分です。一般成分の基本成分のみの表示は、「結果を表示」ボタンを押してください。重量は変更ができますので、摂取する量を入力し重量換算を行ってください。
    ※灰分:
    一定条件下で灰化して得られる残分で、食品中の無機質の総量を意味する。また、水分とともにエネルギー産生に関与しない一般成分として、各成分値の分析の確からしさを検証する際の指標のひとつとなる。食品成分表に記載される数値の測定規準としては、550℃で残存炭素がなくなり、恒量となるまで灰化すると規定されている。
  3. 一般成分に追加して表示したい成分がある場合は、「表示成分選択」ボタンから、食品を追加したい場合は「フリーワードで検索」ボタンから検索し、追加することができます。

参考文献

  1. 日本人の食事摂取基準(2020年版)各論 ビタミン(脂溶性ビタミン) 厚生労働省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. ビタミンAとβ-カロテンによる疾病の予防と治療 高橋典子ら オレオサイエンスVol. 14 (2014) No. 12 p. 523-530 公益社団法人日本油化学会(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. 令和元年国民健康・栄養調査 厚生労働省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  4. 日本食品標準成分表・資源に関する取組 文部科学省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  5. 香川明夫(監修):八訂 食品成分表2021. 女子栄養大学出版部, 東京, 2021.

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