第83回 精神科病院の高齢者問題
公開日:2025年10月10日 08時30分
更新日:2025年10月10日 08時30分
宮子 あずさ(みやこ あずさ)
看護師・著述業
私が働いている慢性期閉鎖病棟には、入院が長期化している患者さんが何人もいる。その多くは、精神症状が悪く、自宅はおろか施設にも移せない人たち。しかし、精神症状が落ち着いていても、退院先が見つからない人もいて、その多くが高齢者である。
典型的な例は、高齢になってようやく精神症状が落ち着いてきた患者さん。幻覚、妄想などの激しい症状は、加齢とともに沈静化する傾向があり、晩期寛解と呼ばれる。
30代から入院して、70代、80代でようやく落ち着いても、次の行き先はなかなか見つからず、本人も慣れた場所がいいという。長らく慢性期閉鎖病棟は、このような患者さんの受け皿になっていたように思う。
ところが最近、新規入院の高齢患者さんについて、長期入院が増え始めている。
例えば、これまで元気に生活していた90代高齢者の場合。急速に認知症が進み、暴力的になったため、いくつかの医療機関を経て慢性期閉鎖病棟に移ってきた。
同居していた親族も70代と高齢で、もうこれ以上支援はできないと言う。ケースワークをして施設入所に向けたいが、心身ともに不調なため、先の見通しが経たない状態になった。
このケースではもともと精神疾患はなかったが、認知症の症状が激しかったため、精神科病院につながった。もともと精神科に通院していた人が心身不調になり、精神科病院に入院するケースもある。
身体中心の急性期病院が、入院の門戸を狭めている今、急に自宅で生活できなくなった高齢者の行き先探しは、非常に困難である。精神科病院に高齢者が集まってしまうのは、やむを得ない事情とも言えよう。
しかし問題は、こうした患者さんの次の行き先が決まらないこと。特に自宅に戻れない場合、施設がなかなか見つからず、入院が長期化してしまう。
私たちも、日中の散歩や院内の日中活動への参加などで、生活リズムを整えるようがんばるが、やはり病院には限界がある。入院生活による認知症の悪化、身体機能の低下に加え、転倒の危険も大きい。
転倒については、急激な不調の原因が、入院前の転倒という例も目立ち、入院しながら整形外科にかかる患者さんも少なくない。中には、精神状態は内服で安定し、メインの問題が圧迫骨折による痛み、というような例もある。
確かに、現状では1人では暮らせない。では、さまざまな支援を入れてはどうか。これもかなり難しい。かといって、精神科病院での治療が妥当なのかといえば、正直首をかしげてしまう。
日本では、精神科病院の病床数が多く、長期入院は常に問題視されている。新規発症の若い患者さんは、3か月を目途に退院できるようになった。精神科病院も、少しずつ変わろうとしていると感じる。
このような状況で、退院困難な高齢者をどのように受け入れていくのか。恐らく多くの精神科病院が、悩んでいるはず。多くの人に知っていただきたい現状である。
<近況>
もふこの点眼は続いていますが、本当によくなりました。充血も目立ちません。目がきれいに写っている2枚を見てください。ここまで良くなりました。


今の心配事は、食事量が減って、体重が減ってしまったこと。抗ウイルス薬と目薬で治療が始まった6月半ばからの3か月で400グラム程度減ってしまったんですよ。今は、口の中にフードを入れて、無理にでも食べさせるようにしています。幸い、素直に飲み込んでくれるので、食事量は安定。とりあえず減らなくなりました。今の体重は3.35kg。早く3.5kgに戻るよう、せっせと食べさせるつもりです。
著者

- 宮子 あずさ(みやこ あずさ)
- 看護師・著述業
1963年生まれ。1983年、明治大学文学部中退。1987年、東京厚生年金看護専門学校卒業。1987~2009年、東京厚生年金病院勤務(内科、精神科、緩和ケア)。看護師長歴7年。在職中から大学通信教育で学び、短期大学1校、大学2校、大学院1校を卒業。経営情報学士(産能大学)、造形学士(武蔵野美術大学)、教育学修士(明星大学)を取得。2013年、東京女子医科大学大学院看護学研究科博士後期課程修了。博士(看護学)。
精神科病院で働きつつ、文筆活動、講演のほか、大学・大学院での学習支援を行う。
著書
「本音のコラム」の13年 2010~2023(あけび書房)、「まとめないACP 整わない現場,予測しきれない死(医学書院)、『看護師という生き方』(ちくまプリマ―新書)、『看護婦だからできること』(集英社文庫)など多数。ホームページ: