第81回 点眼薬、正しく使えていますか?
公開日:2025年8月 8日 08時50分
更新日:2025年8月 8日 08時50分
宮子 あずさ(みやこ あずさ)
看護師・著述業
前回(
)、飼い猫がウイルス性角膜炎になり、治療を開始した近況を報告した。治療は点眼薬(いわゆる目薬)と内服。点眼薬には点眼液と眼軟膏があり、今回は両方を使っている。6月12日から2種類の点眼液を6回、眼軟膏を4回、内服を2回、毎日続けている。その後も改善がないどころか、角膜の病変は進行した。
獣医師と相談した結果、ウイルスに対する治療は継続したまま、7月25日からは1日4回ステロイド点眼液が追加されている。
すると、これまで角度によっては完全に白濁して見えていた右目が、ほとんどの角度で白濁せず、黒目が見えるようになった。治療開始後初めて感じる改善である。
やはりステロイドは魔法の薬。これで良くなれば、何らかのアレルギー反応も加わっていたということだろうか。ともあれ、原因はわからなくてもいいから、とにかく良くなってほしい。
この経験を通して私は、点眼薬を点すというのが想像以上に大変だと痛感している。
点眼薬を渡されて帰る時、眼科が専門の獣医師からは「点眼と点眼の後は時間を空けて。点眼液の後は5分。眼軟膏の後は10分。人間と一緒だからね」と言われた。
そう、人間と同じ。複数の点眼薬を使う場合、眼球に薬液が浸透するのを待って、次の薬液を点す。そのため、浸透する間は次の点眼薬を点さないのが基本なのである。
看護師生活およそ40年。眼科での勤務経験はなくとも、患者さんに点眼薬を点す機会は何度もあった。中には複数の点眼薬を使っていた人もいた。
今回タイマーで計って行ってみると、5分は意外に長い。ここまできちんと間隔を空けて行っていたかと言えば、自信がない。
これは私自身が点眼薬を使う場合にも当てはまる。私はドライアイがあり、通常は1種類、眼のかゆみがある時は2種類の点眼液を使う。間を開けねばと思いつつ、急いでいる時などは、立て続けに点眼するのが常になっていた。
これからは患者さんにも、自分にも、複数の点眼薬を使う時は必ずタイマーをかけて5分間隔を空けようと思う。
思い返せば精神科訪問看護の仕事をしていた時、一人暮らしで点眼が正しくできない利用者さんが何人かいた。特に大変だったのは、白内障の手術後。術後の点眼薬は基本3種類の点眼液。たいていは1日4回のものと2回のものがある。
特に術直後から数日は、確実な実施が必要。できればこの間だけでも入院させてほしいのだが、急性期病院はどこも入院は最小限。望むべくもない。
結局どうにもならない時は、老人保健施設のショートステイ。それが難しければ精神科病院に短期入院したこともあった。後者については、社会的入院とも見えるが、視力回復とともに精神状態も改善したため、妥当な対応だったと考えている。
点眼薬の使い方は意外に難しい。特に複数の点眼薬を使っている方。点眼と点眼の間隔は、きちんと空けていらっしゃるだろうか。自信のない方は是非、タイマーの使用をご検討ください。
<近況>
点眼薬や内服に落ちがないよう、実施したら時間を記入する実施表を作っています。

これはステロイド点眼開始前、一番良くない状態です。右目の角膜がかなり濁って黒目が見えにくくなっていました。今はもう少し黒目が見えるようになっています。

著者

- 宮子 あずさ(みやこ あずさ)
- 看護師・著述業
1963年生まれ。1983年、明治大学文学部中退。1987年、東京厚生年金看護専門学校卒業。1987~2009年、東京厚生年金病院勤務(内科、精神科、緩和ケア)。看護師長歴7年。在職中から大学通信教育で学び、短期大学1校、大学2校、大学院1校を卒業。経営情報学士(産能大学)、造形学士(武蔵野美術大学)、教育学修士(明星大学)を取得。2013年、東京女子医科大学大学院看護学研究科博士後期課程修了。博士(看護学)。
精神科病院で働きつつ、文筆活動、講演のほか、大学・大学院での学習支援を行う。
著書
「本音のコラム」の13年 2010~2023(あけび書房)、「まとめないACP 整わない現場,予測しきれない死(医学書院)、『看護師という生き方』(ちくまプリマ―新書)、『看護婦だからできること』(集英社文庫)など多数。ホームページ: