健康長寿ネット

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第89回 薬効と副作用

公開日:2026年4月10日 08時30分
更新日:2026年4月10日 08時30分

宮子 あずさ(みやこ あずさ)
看護師・著述業


 「宮子さん、なんか食欲がすごく出てきて。お菓子をすごく食べちゃうんです。うつですごく痩せていたから、まあしばらくはいいと思って食べていたんですけど。お腹周りが太ってきて、これ以上は困る。お薬のせいかしら」

 ある日検温に回ると、患者さんからこんな相談を持ちかけられた。精神科の薬は、代謝を落とし、食欲を増す働きを持つものが少なくない。けれども、その程度は薬によって異なっている。

 「おそらくその可能性が高いけれども、今飲んでいる薬を見てきますね。いい加減なこと言っちゃあ申し訳ないから」

 ちょうどキリが良かったので、いったんナースステーションに戻り、電子カルテを開いて確認。すると、ミルタザピンという薬剤名が書かれており、すぐに患者さんの元に戻って説明ができた。

 「今飲んでいるミルタザピンというお薬は、とってもよく効く抗うつ剤なのですが、特に飲み始めは、眠気と食欲増加の副作用があります。副作用はだんだん薄れる場合が多いので、どんどん太ることはないと思います」

 私の説明に、患者さんは「聞いて良かった。ずっと続くのではないのですね」と安心した様子。それでも「どのくらい続くのかしら」との問いには、「人によって違うようだから、なんとも言えません。副作用が辛いならば、遠慮なく先生と相談してください」というほかなかった。

 ミルタザピンは比較的新しい抗うつ剤で、抗うつ作用には耐性が生じにくい(=飲み続けても効果が薄れない)と言われている。一方で、眠気、食欲増加という副作用には耐性が生じるため、飲み続けると体が慣れる。これは、薬の効果と副作用が、それぞれ違う機序で発現するからである。

 ミルタザピンは、この副作用の強さから、眠剤または食欲増進剤としても使用される。特に嘔吐の恐怖から食べられない人には効果があり、緩和ケア病棟でもよく使われていたと記憶している。

 またこの薬は人間のみならず、動物にも使われており、すぐに食べなくなってしまう我が家の飼い猫・もふこには、必要不可欠の薬と言ってよい。

 まさに今、もふこは慢性気管支炎の悪化を引き金に食欲が落ち、ミルタザピンのお世話になっている。患者さんにとって憎き副作用が、もふこにはまさに命を助ける薬効なのだ。しかも、こちらの薬効には耐性がある。連用すると効かなくなるため、なるべく間隔を空けて飲ませている。

 患者さんの食欲増加が早く止まり、飼い猫の食欲増加は長く続いてほしい。人間って勝手だな、と思いながら、飼い猫を通して薬の複雑さを学べたことには感謝した。

 とはいえ、「ウチの猫も同じ薬飲んでいます」とは......さすがに言えなかったなあ。

<近況>

 昨年6月から治療を続けてきた、もふこのヘルペスウイルスによる角膜炎ですが、ここにきて急速に再燃。振り出しに戻ってしまいました。一時は治療をやめられるか、というほど良くなっていたのに。とっても残念です。最近は目をかいてしまうため、エリザベスカラーが欠かせません。使っているのは、軽く行動が制限できればいいので、一枚布でできたもの。気に入ったようで、嫌がらずつけたまま、普通に暮らしています。本当に変わった猫なのかもしれません。

写真:著者購入のエリザベスカラーを装着し、布団の上でくつろぐ愛猫もふこの写真

 ちなみに、このエリザベスカラーは「エリザベスカラー・布」でネット検索して探しました。パステルカラーが多かったのですが、もふこの毛色に合わせてモノトーンをチョイス。汚れやすいので、4枚購入して毎日交換しています。

写真:愛猫もふこのために購入したエリザベスカラーの写真

著者

筆者_宮子あずさ氏
宮子 あずさ(みやこ あずさ)
看護師・著述業
1963年生まれ。1983年、明治大学文学部中退。1987年、東京厚生年金看護専門学校卒業。1987~2009年、東京厚生年金病院勤務(内科、精神科、緩和ケア)。看護師長歴7年。在職中から大学通信教育で学び、短期大学1校、大学2校、大学院1校を卒業。経営情報学士(産能大学)、造形学士(武蔵野美術大学)、教育学修士(明星大学)を取得。2013年、東京女子医科大学大学院看護学研究科博士後期課程修了。博士(看護学)。
精神科病院で働きつつ、文筆活動、講演のほか、大学・大学院での学習支援を行う。

著書

「本音のコラム」の13年 2010~2023(あけび書房)、「まとめないACP 整わない現場,予測しきれない死(医学書院)、『看護師という生き方』(ちくまプリマ―新書)、『看護婦だからできること』(集英社文庫)など多数。ホームページ:ほんわか博士生活(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

「本音のコラム」の13年 2010~2023(あけび書房)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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