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第92回 どうする、患者さんからの暴力

公開日:2026年7月10日 08時30分
更新日:2026年7月10日 09時34分

宮子 あずさ(みやこ あずさ)
看護師・著述業


 医療・介護の現場では、職員から患者・利用者さんへの暴力がたびたび問題になってきた。これに対しては、虐待の通報窓口が公的に設置されるなど、少しずつ制度の整備が進んでいる。

 また、個々の施設でも倫理やアンガーマネジメントなど、いろいろな切り口から、研修も行われるようになった。これでいいという問題ではないが、少なくとも社会も使用者も雇用者も、虐待防止に向けた行動はとり始めている。

 一方で、逆向きの暴力―患者・利用者さんから職員―についてはどうだろうか。

 これらは、カスタマー・ハラスメントあるいはペイシェント・ハラスメントと呼ばれ、この10年ほどようやく報じられるようになったと見える。

 一般のサービス業とは違い、医療・介護の分野では、身の危険を理由にサービスを打ち切るのが難しい。控えめに言ってもその人の暮らし、場合によっては命がかかっているからだ。

 私が勤務する精神科病院にも、職員への暴力を繰り返しながら、同様の理由で、出すに出せない患者さんがいる。このような場合、患者さんの年齢が若いほど、関わるつらさが増してしまう。

 理由は2つ。まず、若い人ほど、エネルギーがあり、逸脱行動も激しい。そして、人生何があるかはわからないと言えども、若い人ほど、お付き合いが長い可能性があるのは事実である。

 長いスパンで見れば、どんな患者さんでも、年を重ねれば勢いが落ちる。以前は大暴れしていた人が、「丸くなったのよ、あの人も」と職員の間で語られる場合も少なくない。

 しかし、不幸にして被害に遭った職員の中には、ショックで休職・退職を余儀なくされた人もいる。一度暴力があった時、どのように対策を取るのか。組織としての対応が求められる状況でもある。

 よくあるパターンとして、⼥性看護師が身体を触られるなどの性的な被害に遭う場合がある。被害者への精神的フォローが行われるのは当然として、加害者である患者さんへの対応はどうだろうか。たいていは厳重注意程度にとどまるのが現実なのだ。

 患者さんの精神状態が悪く、善悪の判断が難しい状況は、皆わかっている。また、患者さんが人手を借りないと生活できない場合、退院は極めて難しい。かくして、入院が継続され、被害者としては割り切れない気持ちが残ってしまう。

 こうした事例を見る中で、たどり着いた結論がある。<抱え込むと厳しい患者さんは、ある程度短期間で病棟を移せば良いのではないか>。特に、暴力があった場合、直ちに別の病棟に移し、被害者がその人と関わらなくて済むようにする。

 これにより、被害者の気持ちも少しは治まるだろうし、不安や恐怖を覚える患者さんとの関わりが、エンドレスでないのは、気持ちが楽になるのは間違いない。

 実際にやるとなると、色々難しそうだが、皆で知恵を絞り、対策を取っていけたらと思う。

<近況>

 動物病院で処方される薬の多くは、人間の薬。もちろん、体重が違うので、1錠を4分割、8分割と切らなければなりません。これまでその作業は動物看護師さんにお任せしていたのですが、ナフサ不足の折、切り分けた薬を入れる袋が一時入手困難に。それならと、錠剤のシートでいただき、家で切ってみたところ、問題なくできました。

 ただ、道具は必要。写真は、錠剤切り分けに特化したハサミ。刃と刃の間に隙間が空いているので、サクッと真上から錠剤が切られる優れものです。

 大小買ってはみたものの、小さな錠剤ばかりなので、もっぱら使うのは小のみ。では大はどうしているかと言えば、ナッツを刻むのにと~~っても重宝しているんです。

 切った錠剤は、クリームを小分けするケースに入れ、マスキングテープでラベリング。切り分ける手間賃も節約でき、けっこう楽しい作業なのでした。

写真:錠剤の切り分けに特化した大小のハサミと、切り分けた錠剤を入れた、マスキングテープでラベリング済みのクリーム用小分けケース

著者

筆者_宮子あずさ氏
宮子 あずさ(みやこ あずさ)
看護師・著述業
1963年生まれ。1983年、明治大学文学部中退。1987年、東京厚生年金看護専門学校卒業。1987~2009年、東京厚生年金病院勤務(内科、精神科、緩和ケア)。看護師長歴7年。在職中から大学通信教育で学び、短期大学1校、大学2校、大学院1校を卒業。経営情報学士(産能大学)、造形学士(武蔵野美術大学)、教育学修士(明星大学)を取得。2013年、東京女子医科大学大学院看護学研究科博士後期課程修了。博士(看護学)。
精神科病院で働きつつ、文筆活動、講演のほか、大学・大学院での学習支援を行う。

著書

「本音のコラム」の13年 2010~2023(あけび書房)、「まとめないACP 整わない現場,予測しきれない死(医学書院)、『看護師という生き方』(ちくまプリマ―新書)、『看護婦だからできること』(集英社文庫)など多数。ホームページ:ほんわか博士生活(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

「本音のコラム」の13年 2010~2023(あけび書房)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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