第94回 初めて知る香害
公開日:2026年9月11日 08時30分
更新日:2026年9月11日 08時30分
宮子 あずさ(みやこ あずさ)
看護師・著述業
前回に続いて今回も嗅覚に関連した話題である。
私が働く職場には、子育て中の同僚がたくさんいて、子どもがいないと知り得ない情報に接する機会になっている。
最近も、小学生のお子さんについて、こんな話を聞いた。学校給食に欠かせない給食当番。その際着用するエプロンが共用から、私物に変わったというのである。
「持ち帰って洗濯するのに、柔軟剤の匂いとか、アイロンかけるかけないとか、親の間でいろいろな意見があって。結局折り合わなかったんですよ。それで子どものエプロンは家で準備することになったんです」
60代の私が子どもの頃も、週交代の給食当番があった。着けるエプロンは共用。1週間着て、週末持ち帰って家で洗濯して戻す。週明け持参するのを忘れないよう、緊張した記憶がある。
この話を聞いた時は、へえ、なかなか世知辛い話だなあ、と驚きつつも聞き流していた。ところが最近、その認識が大きく変わる出来事を経験し、共用のものを洗濯する難しさを再確認した。
きっかけは、ちょっとした事情で知人から借りたTシャツを返却前に洗濯したこと。洗濯する前は気づかなかったのだが、洗い上がってみると、強い香料の匂いが鼻をつく。
洗い直すほどではないものの、若干匂いが移った洗濯物もある。このまま浴室乾燥で乾かしたら、どれだけ強烈に匂うか不安になった。
結局、そのTシャツのみ別にして室内干しに。乾くにつれて香料の匂いも収まったが、あの鼻に残る強烈な匂いは、忘れられない。
これが最近話題の香害か......と、初めて実感した。
香害とは、柔軟剤や合成洗剤など人工的かつ過剰な香りによって起こる、さまざまな害をさす。中には頭痛や吐き気、めまいなど、身体症状をきたす人もいて、社会問題化していると言っていいだろう。これを読んでいる方の中にも、実際に苦しんでいる方がいらっしゃるかもしれない。
世の中には体験しないとわからないことがたくさんあり、特に嗅覚というのは、想像だけでは絶対にわからない。
私自身は、たまたま香料の薄い洗剤を使い、柔軟剤は使っていない。そのため、香害というのが今ひとつぴんとこなかったのだが、なぜ香りが問題になるのか。その現状を垣間見ることができた。
ただ、この強い匂いにも、利点がある。強い匂いがついた結果、洗濯物に残りがちな皮脂臭、生乾きのような匂いは、完全にマスキングされる。
我が家の場合、洗濯の際に漂白剤を使って、これらの匂いを除去しようとするが、なかなか完全にとはいかない。
不快な匂いを除去しようとして、強い香りをつけるのは、まさに香水の歴史そのもの。それだけ香害は非常に根深く、解決が難しい問題に思われる。
<近況>
長い夏もようやく終わり、短い秋がやってきます。猫がいる2階は、留守の時もエアコンフル稼働。少しでも効率がいいよう、手ぬぐい2枚をのれんに活用しています。2枚のうち1枚は必ず猫の絵の手ぬぐい。季節感も意識しながら、毎週交換します。写真は、8月終わりのチョイスです。

著者

- 宮子 あずさ(みやこ あずさ)
- 看護師・著述業
1963年生まれ。1983年、明治大学文学部中退。1987年、東京厚生年金看護専門学校卒業。1987~2009年、東京厚生年金病院勤務(内科、精神科、緩和ケア)。看護師長歴7年。在職中から大学通信教育で学び、短期大学1校、大学2校、大学院1校を卒業。経営情報学士(産能大学)、造形学士(武蔵野美術大学)、教育学修士(明星大学)を取得。2013年、東京女子医科大学大学院看護学研究科博士後期課程修了。博士(看護学)。
精神科病院で働きつつ、文筆活動、講演のほか、大学・大学院での学習支援を行う。
著書
「本音のコラム」の13年 2010~2023(あけび書房)、「まとめないACP 整わない現場,予測しきれない死(医学書院)、『看護師という生き方』(ちくまプリマ―新書)、『看護婦だからできること』(集英社文庫)など多数。ホームページ: